研究領域 | グリアデコーディング:脳-身体連関を規定するグリア情報の読み出しと理解 |
研究課題/領域番号 |
21H05614
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
平岡 優一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (00778681)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | アストロサイト / 多様性 |
研究実績の概要 |
当初計画では2021年度に脳領域特異的アストロサイト刺激マウスより単一細胞レベルの遺伝子発現解析を行う予定であったが、実験に必要とされる機器の重篤な故障により年度内での実施が困難となったため予定を変更し、AAVベクターを用いたアストロサイトの脳領域間機能的多様性に関する解析を行った。前帯状皮質、視床、海馬へそれぞれAAVベクターによって特異的にDREADD遺伝子発現を誘導してその刺激時の行動解析を行ったところ、前帯状皮質アストロサイトではうつ関連行動、視床では活動量、海馬では記憶の獲得のそれぞれにおいて変化が見られ、これらの脳領域アストロサイトの新規な機能的多様性の存在が明らかになった。さらに小脳におけるアストロサイト機能の分子機構を知るため、新規に作出された小脳アストロサイト特異的グルタミン酸輸送体欠損マウスの解析を行った。このマウスでは神経変性を伴わない進行性の運動失調が観察され、小脳アストロサイトの機能障害がこれまでに知られていない運動失調の病態メカニズムに寄与している可能性があることを明らかにした。このマウスの小脳を用いて遺伝子発現解析を行った。対照群と欠損マウス群との間で発現変動の見られた遺伝子群を抽出し比較したところ、1.5倍以上の発現上昇が見られた遺伝子を426遺伝子、発現減少が見られた遺伝子が206遺伝子同定された。これらの遺伝子群に対してGO解析、パスウェイ解析を実施、更に小脳における細胞種特異的発現パターンをもとに分類を行い、病態分子基盤の候補遺伝子群の絞り込みを行った。これらの遺伝子については組織学的解析によってその評価を実施し、一部の遺伝子については既にアストロサイト特異的な発現上昇が欠損マウス群で見出されることを確認している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定では2021年度に単一細胞RNA解析を行うことで領域間機能的多様性を持たしている分子メカニズムに迫る予定であった。しかしサンプル調製に必要な機器が経年劣化により故障したためその更新が必要になり、さらに世界情勢の影響から入手が年度末にずれ込んだため当初予定していた解析を次年度へ延期することになった。一方で、当初予定していなかった新たな領域間機能的多様性を見出す実験を実施できたため、22年度の解析では当初予定よりも更に踏み込んだ多様性に関する解析を行うことが可能になったため、総合的には順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、当初より予定していた機能的多様性に関する遺伝子発現解析を実施する。21年度の解析からより複雑な比較を行う必要性が生じたため単一細胞解析をとりやめ、より複雑な組み合わせでの比較や低発現遺伝子への感受性の高い通常のRNA-seq解析を行うものとする。さらに、21年度に実施した小脳でのRNA-seq解析結果からアストロサイトの運動制御機能に関する遺伝子群の候補が絞り込まれているため、これらの遺伝子に関しての解析を継続して行う。
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