本年度は、昨年度に引き続いて、マウス胎生期大脳におけるミクログリアおよびマクロファージの細胞動態についての研究を推進した。特に、胎生早期にミクログリアが脳に定着する際の分布ルートの同定やそのメカニズムの解析を行った。 ミクログリアおよび脳境界関連マクロファージはともに卵黄嚢由来であるが、いつ・どこでそれぞれの細胞に運命づけられるのかはこれまでよく分かっていなかった。 我々は、脳スライス培養下ライブイメージングや二光子顕微鏡を用いた胎仔脳in vivoイメージングシステム、フェイトマッピング、細胞追跡調査等を組み合わせた解析を通じて、脳室内腔に分布するマクロファージが胎生12日目において大脳原基に侵入し、侵入したマクロファージが周囲の環境に呼応してミクログリアへと分化することを明らかにした。すなわち、大脳に存在するミクログリアの一部は脳室内腔マクロファージに由来することが分かった。これは、胎生10~11日目頃にミクログリアとしてすでに大脳原基に分布している集団とは別に、それより後の段階で外部から大脳原基に侵入したマクロファージに由来するミクログリアが存在することを意味し、ヘテロな細胞集団であることが明らかとなった。本研究成果は、2023年2月にCell Reports誌に掲載され、editor's pickとしても取り上げられた。 現在は、上述の研究結果に基づき、「なぜ胎生12日目でマクロファージの大脳原基への侵入が起こるのか」の解明を目指し、様々な要因の可能性を考え、それぞれに対する検証を行っている。
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