本計画では、孤発性アルツハイマー病(AD)発症 に寄与するAPOE遺伝子のε4型(APOE4)のヒトミクログリアにおける病態生理学的機能を解明する。2021年度までに、APOE 3/3多型を持つ健常人由来iPS細胞から、CRISPR/Cas9のゲノム編集によって、APOE 4/4のisogenic iPS細胞を作出していた。2022年度は、ゲノム編集によって、アルツハイマー病発症に対して保護的な作用をするAPOE Christchurchバリアントを導入したisogenic iPS細胞も作製した。 次に、ヒトiPS細胞に複数のサイトカイン・低分子化合物を処理すると同時に、ミクログリア発生に重要な転写因子PU.1をTet-on系を用いて発現誘導することで、ミクログリア様細胞(iMGL)を分化誘導するプロトコールを確立した。その成果を査読付き国際誌へ出版した(Sonn et al. 2022 Inflamm Regen)。APOE 4/4 iPS細胞については、PU.1 Tet-on系で使用するプラスミドを導入後、複数クローンの選択を終了し、上記プロトコールでiMGLへ分化誘導した。 iMGLを脳内に持つキメラマウスの開発では、移植の予備検討を行った。まずAPOE 3/3 iMGLを経鼻移植法で野生型マウスの脳へ移植し、2週間後にiMGLの定着を検討したところ、海馬・小脳・線条体にてヒト抗原であるSTEM121を発現するiMGLが観察された。 理化学研究所バイオリソース研究センターとの契約を締結し、進行性にAβプラークを形成するAPP (NL-G-F)マウスの導入を行い、APPマウスコロニーが出来た。このモデルマウスでは、4ヶ月でアミロイドプラークが形成されることをAmylo-Glo試薬を用いて確認できた。
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