中枢神経系全体に存在するグリアの一種アストロサイトは、動物行動に応じて活動を変化させることが知られている。しかし、具体的にどの部位のアストロサイトがいつ・どこで活動を示すかについて、特に全脳レベルの解析は未だ成されていない。本研究課題は、環境適応アッセイを用いることにより、環境適応パターン別のアストロサイト活動をマッピングし操作することにより、その機能的意義を明らかにすることを目的としている。この目的を達成するために、ウイルス遺伝工学や薬理遺伝学的手法を基軸に、マウス行動試験、免疫組織学を組み合わせたアプローチを採用している。二年度目にあたる今年度では、昨年度に確立した多領域アストロサイト活動をプローブする系を用いて、様々な行動/状態を示すマウスにおける多領域アストロサイト活動のマッピング行った。具体的には、(1)視覚遮断/刺激、(2)嫌悪/報酬刺激、(3)全身炎症を伴うマウスモデルを用いた。その結果として、それぞれの行動/状態固有のアストロサイト活動分布が明らかになった。つまり、様々な外部/内部環境に対するアストロサイト活動が多領域で世界に先駆けて発見された。さらには、アストロサイトにおける最初期遺伝子とカルシウムシグナルの関連もex vivoの系を用いてメカニズムの一端を解明した。これらの知見は次年度以降、公募後期にて行うアストロサイト活動の遺伝学的操作実験による機能解析の重要な基盤となる。
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