本研究では,植物が異なる時間スケールの栄養欠乏ストレスに対して誘導する応答について,その制御機構の解明を目指している。最近申請者らは,栄養素の中でも特に重要な窒素に着目し,窒素応答性花成制御を担う鍵因子として転写因子FBH4および上流キナーゼSnRK1を同定し,長年謎であった窒素欠乏による花成早期化の分子機構の一端を明らかにした。本研究では,こうした鍵因子の機能に着目し,植物が細胞内における短期的な栄養欠乏応答から長期的・個体レベルでの応答段階へと移行する際の分子スイッチ機構について解明を目指す。主に,下記3研究課題に関する詳細な解析を効率的に実施する。 研究課題 1)短期的および長期的な窒素欠乏に応じたFBH4機能変換機構の解析 研究課題 2)窒素応答性成長相転換を誘導する上流シグナル機構の解析 研究課題 3)成長相転換制御における光周期シグナルと窒素シグナル統合機構の解析 当該年度は,ChIP-seq解析に取組み,FBH4が制御する標的遺伝子についてグローバルな情報を得た。また,これまであまり分かっていなかった窒素欠乏におけるエピゲノムシグナルの変動についても新たな知見が得られた。また,これまでのIP-MS解析で得られた情報からFBH4機能とリン酸化修飾や相互作用因子について解析した。加えて,上流キナーゼSnRK1の活性変動について,窒素欠乏時の代謝物変動との関連を解析し,どういった代謝物がSnRK1活性制御に影響するかについてin vivoおよびin vitroでの解析が可能となった。
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