側根形態形成における pre-mRNA スプライシングの役割について知見を得るため、葉緑体機能をスペクチノマイシンで阻害した主根断片サンプルから全RNAを抽出し、RNA-seq解析を行った。その結果、ストレス応答関係遺伝子において発現上昇とスプライシングパターン変化が検出された。この中には植物ホルモン関係遺伝子が含まれており、スプライシング制御が植物ホルモンシグナリングを介して側根形態に影響する可能性が示された。また、温度、光、葉緑体機能阻害、といった条件を変化させて側根形態を調べた結果、さまざまな刺激によって側根幅の拡大が起こることがわかり、高温下では他の条件に関係なく側根幅が変化する様子が確認された。その一方、側根長は光および温度条件に関係なく、葉緑体阻害剤処理によって短くなった。以上から、植物はさまざまな環境因子の条件に対応して、側根形態を作り分けていると考えられた。 さらに、葉緑体レトログレードシグナルであるヘムシグナルの制御異常変異体genomes uncoupled 1 (gun1)と野生型を組み合わせた接ぎ木実験から、側根形態制御に重要なのは地上部ヘムシグナルであることを示された。さらにpre-mRNAスプライシング異常変異体であるshoot redifferentiation defective 2 (srd2) と野生型の接ぎ木実験を行ったところ、地上部におけるスプライシング制御が、ヘムシグナルを介した側根形態制御に重要であることが明らかとなった。 以上、本研究を通して、植物が地上部の環境に合わせて地下部の形態を積極的に制御していること、この側根形態制御には、pre-mRNAスプライシング制御が積極的な役割を果たしており、地上部におけるヘムシグナリングを介した動的スプライシング制御が植物ホルモン制御を通して側根形態を変化させること、が示唆された。
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