公募研究
時計の重要な性質の1つに「周期の温度補償性」とよばれる環境の温度変化への抵抗性が知られており、これは刻々と変化する環境下でも一定の時計進行スピードを保つ意義がある。一般に温度が高くなれば化学反応の速度は速くなることが、「アレニウスの式」によって示されている。時計の周期の温度補償性は、アレニウスの式から逸脱した反応であり、その謎は現在も多分野の科学者の興味を引きつけている学術的にも重要な課題だ。私たちは温度補償性のメカニズムの解明を目指して、周期変異体セットの形質を解析したところ、prr5 toc1 二重変異株が極めて損なわれた温度補償性の形質を示すことを見出した。これは、PRR5と TOC1の機能が温度に依存することを暗示していたが、実際に低温でPRR5とTOC1タンパク質量が減少することを見出した。この減少に先立って、PRR5とTOC1はポリユビキチン修飾を受けていた。PRR5とTOC1タンパク質の分解を担う主要なE3リガーゼはZTLであるが、ztl変異体においても低温でのPRR5とTOC1の分解は滞っていなかった。またztl変異体の温度補償性は、野生型のものと同等であったため、ZTLは温度補償性制御に関わらないと考えられる。低温依存的なPRR5とTOC1の分解制御機構を解明するために、低温依存的な相互作用因子の探索を質量分析で行なったところ、新たなE3リガーゼが見出された。このE3リガーゼを欠損した株では、低温依存的なPRR5とTOC1のユビキチン化および分解が滞っていた。以上、温度補償性に関わる新たな分子メカニズム「低温依存的な時計のブレーキ因子の分解」を明らかにすることができた。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件)
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