研究領域 | 不均一環境変動に対する植物のレジリエンスを支える多層的情報統御の分子機構 |
研究課題/領域番号 |
21H05659
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
西尾 治幾 滋賀大学, データサイエンス学系, 助教 (60802593)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 花成抑制遺伝子 / 気温変動 / 花成ステージ遷移 |
研究実績の概要 |
アブラナ科植物では、越冬中に低温を経験することによって、栄養生長から繁殖への発生的な移行(花成ステージ遷移)が起きる。一方、発芽時期は季節的に一定ではないため、特に多年草において越冬個体の生育段階は集団内で不均一であり、その後の花成ステージ遷移にも影響を及ぼすことが予想される。これまで、冬を模倣した長期低温処理(春化処理:Vernalization(V))後の花成と生育段階の関係について、一年草のシロイヌナズナを用いた研究が数多く行われてきた。一方、陸上植物の大多数を占める多年草における知見は限られている。 本年度において、シロイヌナズナ属の多年草であるハクサンハタザオを対象として、生育段階による春化応答性の違いを調べた。成熟個体、実生、種子に9週間の低温処理を施し、その後暖温に戻す3処理区(Mature V、Seedling V、Seed V)、および一貫して暖温で生育させる対照区(Without V)において、花成ステージの進行(栄養成長、抽台、開花、栄養成長への逆転換)および花成制御遺伝子(VIN3、FLC、FT)の発現を調べた。 マルコフモデルを用いて花成ステージの遷移確率をベイズ推定したところ、各花成ステージへの遷移確率は、Mature Vが他の条件より有意に高く、Seed VとWithout Vでは差がなかった。また、花成制御遺伝子の発現量の差異が花成ステージの遷移確率の差異に影響していることがわかった。これらの結果より、シロイヌナズナ属の多年草における、生育段階による春化応答性の違いおよび花成ステージの遷移と遺伝子発現の関係の一端が明らかとなった。 また学術変革領域内における共同研究として、宇都宮大学と葉緑体運動の統計解析、奈良先端科学技術大学院大学と熱ストレス応答におけるエピゲノム時系列解析、東京大学と転写開始点の季節変化の分析を進行している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外サンプリング、植物の育成、分子実験はいずれも問題なく進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
学術変革領域内で、TSS-seqの改良版であるTSS-seq2の開発が進んでおり、本研究課題においても取り入れたいと考えている。TSS-seq2の技術講習会が今後開催される予定なので、それに参加し技術習得後、自身が取得したサンプルを処理しシーケンス解析に進む。
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