公募研究
マウスは個体や種の存続のために、嗅覚系を介して、エサの探索や仲間の識別、天敵からの回避などの本能判断を下している。しかし、昨年までの当グループの研究から、幼少の臨界期に特定のニオイを嗅がせておくと、例えそのニオイが先天的に忌避性であっても、好意的なニオイとして刷り込み記憶されることが明らかとなった。そこで本年度は、幼少期のニオイ暴露によって、脳内の神経回路にどのような影響が生じ、匂いの質感が変化するかについて解明を試みた。授乳期の母親の腹に、忌避性のニオイである4-メチルチアゾール(4MT)を塗布して刷り込むと、仔マウスは4MTに対して誘引行動を示するようになった。ニオイ刷り込みによって影響を受ける脳領域を特定するため、神経活動の指標となるc-fos遺伝子の発現をin situ hybridization法によって解析した。その結果、4MTを含む忌避避的なニオイ物質によって活性化される脳領域(室傍核、分界条床核、扁桃体中心核)の活性化が、4MTの刷り込み記憶によって抑制されていることを確認した。一方、報酬学習や意思決定に関わると考えられている領野(眼窩前頭皮質)の活動が、4MTの刷り込み記憶によって新たに活性化されることを見出した。更に興味深いことに、4MTの刷り込みを行ったマウスは、化学構造上では全く似ていない別な不快臭(プロピオン酸)に対する忌避行動も抑制されていることを発見した。以上の知見は、仔マウスが生得的な質感に関わらず、生存のために様々な環境のニオイに順応できる能力を有していることを示唆している。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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科学 第1~4回
巻: 93 ページ: 61-67(第1回)
Front Behav Neurosci
巻: 16 ページ: 943647
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感染・炎症・免疫
巻: 52 ページ: 44-52
実験医学 第1~4回
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https://r-info.ad.u-fukui.ac.jp/Profiles/10/0000915/profile.html