研究領域 | 脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作 |
研究課題/領域番号 |
21H05685
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
森 琢磨 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (70545798)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | CASK / 小脳低形成 / X染色体不活性化 |
研究実績の概要 |
X染色体上に存在するCASK遺伝子は、知的発達障害を伴う小脳および橋部の低形成(MICPCH症候群)の責任遺伝子であることが知られている。患者のほとんどが女性であることから、MICPCH症候群はヘミ接合である男性は致死であるとかんがえられている。本研究でCASKノックアウトマウスの発達を解析した結果、マウスの出生時の性比および遺伝型は、メンデル遺伝に従っていた。しかしながら、オスノックアウトマウスは、出生直後から哺乳することができず、24時間以内に死亡していたことから、CASKノックアウトによって哺乳など運動機能が低下することが示唆された。生存可能なメスヘテロノックアウトマウスは、生育スピードが遅く、体重増加および成獣の体重が低下することが明らかになった。 次に、CASKヘテロノックアウトマウスの運動機能を行動学的に解析した。オープンフィールドテストにおける走行距離に変化は見られなかった。次に、ローターロッドテストを行ったところ、持続時間および学習効果はともに野生型よりも低下していたことから、ヘテロノックアウトマウスの運動機能低下が確認された。 最後に、このマウスから脳組織切片標本を作成し、小脳形態、細胞分布および密度を解析した。CASKヘテロノックアウトマウスの小脳サイズは小さくなっていたものの、他の病態モデルマウスで観察されるような小葉形態の異常は観察されなかった。そして、カルビンジン免疫組織化学法によってプルキンエ細胞を可視化し、その細胞数および細胞形態を解析したところ、プルキンエ細胞の配置間隔に違いはなかったが、プルキンエ細胞層の切片上の長さが短くなっていた。また、顆粒細胞層および分子細胞層の厚みも低下していたことから、CASKヘテロノックアウトマウスでは、小脳を構成する多種類の細胞数が減少した結果、小脳サイズの低下が起きると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で用いられるメインの解析方法は組織学解析であるが、コロナ禍における半導体不足のため、高解像度での撮影を可能にするCCDカメラの生産がストップしており、組織解析にやや遅れが見られる。本研究で実施される薬理学的およびゲノム編集的なX染色体不活性化解除については、予定通り実験を進めることができており、解析すべき組織サンプルも得られている。今後は、実験後の組織サンプルの解析の迅速化を進めることで、研究スピードをこれまで以上に速めていきたいと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍における全世界的な半導体不足のため、当初の予定を変更して、Keyenceの全自動顕微鏡を購入することで、組織解析スピードの向上を目指している。また、この顕微鏡によって得られた組織画像を解析する機械学習プログラムをすでに適用し始めていることから、当初の計画以上に研究を推進させたいと考えている。
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