研究実績の概要 |
幼児は周囲の会話を聞くことで、その言語固有の特徴音を識別する能力が発達する。これら音声認識学習は「臨界期」と呼ばれる特定の時期に顕著であり、成熟後は、学習を担う神経回路の可塑性は低下する。しかし近年、成熟動物で臨界期を再開できる可能性が示されてきた。これは、臨界期での可塑性を担う神経機構が、臨界期の人為的な再開誘導の標的になりうることを意味しているが、それら機構の理解はいまだに限定的である。 近年我々は、音声認識学習のメカニズム研究を進めるモデルとして、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の歌識別学習パラダイムを確立した。ショウジョウバエは「求愛歌」と呼ばれる種に固有な羽音を用いて求愛する。この求愛歌は近縁種間で異なるリズムを持ち、異種間交配を避ける一要因となる。本研究では、このキイロショウジョウバエモデルを用いて、歌識別学習の神経回路機構の解明を目指す。 当該年度では、キイロショウジョウバエの脳における主要な神経修飾物質であるドーパミンとセロトニンに着目した。まずは受容体側から神経機構に迫るため、4種類のドーパミン受容体(Dop1R1, Dop1R2, Dop2R, DopEcR)、5種類のセロトニン受容体(5-HT1A, 5-HT1B, 5-HT2A, 5-HT2B, 5-HT7)の発現をRNAi法で個別に抑制し、歌識別学習への影響を定量評価する、という実験系を構築した。解析した受容体遺伝子の中で、少なくとも1種類の遺伝子が、発現抑制により歌識別学習が変化する、という結果がこれまでに得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、ハエの歌識別学習におけるドーパミンやセロトニンの関与を調査することで、歌識別学習を担う神経回路機構を解明することである。当該年度は4種類のドーパミン受容体(Dop1R1, Dop1R2, Dop2R, DopEcR)、5種類のセロトニン受容体(5-HT1A, 5-HT1B, 5-HT2A, 5-HT2B, 5-HT7)の発現をRNAi法で個別に抑制し、歌識別学習への影響を定量評価する、という実験系を構築した。これまでに解析した受容体遺伝子の中で、少なくとも1種類の遺伝子が、発現抑制により歌識別学習が変化する、という結果が得られており、概ね順調に進展していると評価できる。
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