研究領域 | 脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作 |
研究課題/領域番号 |
21H05694
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
疋田 貴俊 大阪大学, 蛋白質研究所, 教授 (70421378)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 精神疾患 / 臨界期 / 社会的孤立 / 遺伝-環境相互作用 / ドーパミン / 大脳基底核 |
研究実績の概要 |
精神疾患は遺伝-環境相互作用により発症する複合疾患である。精神症状の発症には臨界期が存在し、思春期での社会相互作用などが環境要因として関与している。精神疾患病態として神経回路の可塑性変化が想定されているが、遺伝-環境相互作用によりどのように神経回路動態が変化するかはわかっていない。そこで本研究では、臨界期での社会的孤立ストレスにより発症する精神疾患遺伝モデルマウスを用いて、神経回路病態を明らかにすることを目的とした。精神疾患との関与が示唆されているKPNA1遺伝子を遺伝要因として、Kpna1ノックアウトマウスの行動解析を行った。Kpna1ノックアウトマウスは高架十字迷路試験での不安行動の減少と新規物体認識試験での認知障害を示した。さらにKpna1ノックアウトマウスに生後5-8週齢での社会的孤立ストレスを加えることによって、抑制性回避試験での忌避行動の障害とプレパルスインヒビション試験における感覚運動ゲーティング障害を呈した。このことはKpna1ノックアウトマウスが臨界期での社会的孤立ストレスにより発症する精神疾患モデルであることを示している。 次に、大脳基底核神経回路において、腹側被蓋野からのドーパミン入力を受けている神経核のドーパミン動態を解析した。側坐核の神経細胞にドーパミンセンサー蛋白質GRABDAをAAVベクターにより発現させ、報酬行動中のマウスの側坐核におけるGRABDAの蛍光強度変化をファイバーフォトメトリ法を用いて測定した。これにより側坐核ドーパミン動態が報酬予測誤差をコードしていることを示した。今後、ドーパミン動態と大脳基底核神経回路に着目し、精神疾患の発症における臨界期機構の解明へとつなげる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨界期での社会的孤立ストレスにより発症する精神疾患モデルを確立した。また、ファイバーフォトメトリ法により、大脳基底核のドーパミン動態測定法を確立した。
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今後の研究の推進方策 |
臨界期での社会的孤立ストレスにより発症する精神疾患モデルの認知学習中のドーパミン動態を測定する。また、認知学習における大脳基底核神経回路特異的なカルシウムイメージングを行う。
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