研究領域 | 脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作 |
研究課題/領域番号 |
21H05702
|
研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
中川 直樹 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 助教 (30835426)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
|
キーワード | 大脳皮質神経回路 / 臨界期 / ゴルジ体 / 樹状突起精緻化 / in vivoイメージング |
研究実績の概要 |
生後発達期の臨界期には神経回路の再編成が生じ、情報伝達の精確性が向上する。細胞レベルの変化として、神経細胞は適切な標的軸索と結合した樹状突起を勝者として維持・成長させ、余剰な樹状突起は退縮させる(樹状突起精緻化)。本研究は、細胞の形態形成に重要な役割を担うゴルジ体に着目し、マウス大脳皮質体性感覚野第4層(L4)神経細胞をモデルとして、樹状突起精緻化におけるゴルジ体の役割解明を目的として行うものである。2021年度は、ゴルジ体局在と樹状突起精緻化との因果関係、およびゴルジ体の局在変化における神経入力の役割、の解明を目標とした。 まず、ゴルジ体局在と樹状突起精緻化との因果関係を検証するために、マウス脳内で時期特異的なゴルジ体局在操作を可能にするツールの作製を行った。条件検討の結果、マウス体性感覚野L4神経細胞に対し、樹状突起精緻化の臨界期にあたる生後第1週の期間に限定してゴルジ体局在異常を引き起こすことが可能となった。このツールを用いて、臨界期特異的なゴルジ体局在異常がL4神経細胞の樹状突起形態に及ぼす影響について解析を進めた。 これと並行して、生後発達期の神経入力とゴルジ体局在との関連を明らかにするための実験を行った。神経可塑性に重要な役割を担い、またL4神経細胞の樹状突起精緻化に必須であるNMDA型グルタミン酸受容体を操作の標的とした。NMDA受容体の必須サブユニットであるGluN1をL4神経細胞特異的に単一細胞でノックアウトし、過去の報告と一致して樹状突起精緻化に異常が生じることを確認した。この系を用いて、神経入力阻害がゴルジ体局在に及ぼす影響について解析を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時期特異的ゴルジ体局在操作ツールの作製に成功し、ゴルジ体局在と樹状突起精緻化との因果関係を実際のマウス新生仔脳内で明らかにするための道筋をつけることができた。また、生後発達期の神経入力とゴルジ体局在との関連を明らかにするための、NMDA受容体の単一細胞欠損実験にも一定の進捗があった。以上のことから、おおむね順調に進展していると考えた。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度作製した時期特異的ゴルジ体局在操作ツールを用いて、ゴルジ体局在と樹状突起精緻化との因果関係を明らかにするための樹状突起形態解析を進める。さらに、NMDA受容体の単一細胞欠損実験のデータ取得と定量解析を進め、臨界期のL4神経細胞のゴルジ体局在制御における神経入力の役割を明らかにする。
|