研究領域 | 脳の若返りによる生涯可塑性誘導ーiPlasticityー臨界期機構の解明と操作 |
研究課題/領域番号 |
21H05705
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
下條 雅文 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 脳機能イメージング研究部, 主任研究員 (20455348)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 臨界期 / 回路再編 / 炎症 |
研究実績の概要 |
大脳の神経回路における興奮/抑制バランス異常と炎症病態は、多くの神経変性疾患に共通して早期から観察される特徴として最近注目を集めている。本研究では、アルツハイマー病の中核病変であるタウ蛋白質が凝集・沈着する認知症モデルマウスを用いて、タウ病変により傷ついた回路を再編し脳機能回復させるために炎症病態を介して可塑性誘導が作り出されている可能性を検証する。本年度は、rTg4510系統タウオパチーモデルマウス脳において、タウ病変や神経変性に先行し、炎症性アストロサイト関連分子マーカーの変動が早期から観察される事を見出した。同モデル動物を用いた予備的な検討により、病変進行に伴いアストロサイトの形態や機能に異常が生じている事も見いだされつつあり、こうした細胞障害を遺伝学的な介入で調節可能かどうか調べるため操作分子の開発に着手した。また、炎症性アストロサイトを選択的に標識し生体イメージング可能とするレポーターシステム開発にも取り組み、炎症病態のマクロイメージングと制御を同時に実現できるか検討を進めている。一方、大脳タウ病変と付随して抑制性ニューロンの障害が早期より生じている事を見い出したので、これら抑制性ニューロン活動の画像解析と遺伝子操作の実現を目指し、同細胞に特異的なプロモーター領域の探索や、アデノ随伴ウイルスベクターによる選択的な遺伝子発現の可能性を模索した。特に、臨界期や回路再編時に重要な役割を果たすPVニューロン選択的な解析や操作を実現可能かどうか、引き続き検討を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、認知症モデル動物脳における炎症病態と回路障害の可視化と遺伝学的な制御に向けた技術開発は進んでおり、論文成果も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き認知症モデル動物脳における炎症と回路の関連性を追求し、回路再編をイメージングする方法の確立を目指しながら、遺伝学的な介入によりどのような影響が生じるのか検討する事を通じて、脳発達期や疾患病態に共通する可塑性誘導メカニズム解明を目指す。
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