公募研究
大脳の神経回路における興奮/抑制バランス異常と炎症病態は、多くの神経変性疾患に共通して早期から観察される特徴として最近注目を集めている。本研究では、アルツハイマー病の中核病変であるタウ蛋白質が凝集・沈着する認知症モデルマウスを用いて、タウ病変により傷ついた回路を再編し脳機能回復させるために炎症病態を介して可塑性誘導が作り出されている可能性を検証した。初年度は、タウ病態を呈する認知症モデルマウス脳において、タウ病変と神経変性の進行度を生体イメージングと死後脳解析で対応付けながら画像解析する技術基盤を実現した。また、こうしたタウ病態の形成に先行して炎症性アストロサイトの分子マーカー群の変動が早期から生じている事も見い出され、同細胞群の形態学的・機能的な変化を二光子顕微鏡とポジトロン断層撮像法(PET)で調べる画像解析法の確立に向けた取り組みを進めた。本年度は、こうした神経炎症が回路の興奮/抑制バランス破綻を誘導する可能性を追求するべく、興奮性ニューロンと抑制性ニューロンのそれぞれに対して選択的な発現誘導を可能とする遺伝子導入法を確立し、同モデルマウス脳におけるそれぞれの細胞活動を二光子顕微鏡によるカルシウムイメージングで画像評価した。検討を重ねた結果、タウ病変が形成される過程において、抑制性ニューロンの中でも臨界期に重要な役割を果たすと考えられるPVニューロンに選択的な機能障害が生じる事が明らかとなり、この障害は炎症性グリアを介したメカニズムに起因する事が示唆されるなど、回路病態の解明に迫る重要な知見が得られ論文成果に繋がった。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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iScience
巻: 26 ページ: 106342~106342
10.1016/j.isci.2023.106342
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