翻訳の伸長反応は、ペプチド鎖のフォールディングや細胞内小器官への配送などと共役しており、その異常は不良タンパク質の産生に直結する 。細胞はこれを回 避するために、異常な翻訳伸長を感知し、強制的に翻訳を終結させる品質管理機構(RQC:Ribosome-mediated Quality Control )を備えている。本研究では、RQCの標的となる内在性異常翻訳の実体を明らかにすべく、分泌系タンパク質の共翻訳的な小胞体膜への配送における品質管理機構の役割とその破綻によるタンパク質の恒常性への影響を調べた。 テイルアンカー型を除く分泌系タンパク質の大部分は、SRPを介して共翻訳的に小胞体膜へと配送されるが、SRPの枯渇下では、小胞体への輸送能力が減少するため誤って細胞質で翻訳されることが知られている。また、最近の報告では、いくつかの分泌系タンパク質は、SRPの不足によってミトコンドリアへ誤配送されることもわかってきた。本研究では、この異常事態を感知する品質管理機構の存在を新たに見出した。 異常な翻訳停滞を感知するセンサータンパク質Hel2は、SRPの枯渇に伴う分泌系タンパク質の翻訳異常を識別し、処理することが明らかになった。また、SRPの発現低下時にHel2が欠損することで分泌系タンパク質がミトコンドリアに誤配送される割合が顕著に上昇することが明らかになった。さらに、ミトコンドリアへ誤配送された分泌系タンパク質は、さらなる品質管理機構の標的となりうることが明らかになった。
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