研究領域 | マルチファセット・プロテインズ:拡大し変容するタンパク質の世界 |
研究課題/領域番号 |
21H05717
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岩川 弘宙 東京大学, 定量生命科学研究所, 講師 (60710415)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | リボソーム停滞 / RNAサイレンシング |
研究実績の概要 |
本研究では植物科学、生化学、生命情報科学、そして構造生物学を駆使することにより、小分子RNA依存的なリボソーム停止機構を統合的に理解する。これにより、非コードRNAにコードされたペプチドがリボソーム内に留まることで小分子RNAの生産を調節するというタンパク質の新しいファセットに光を当てる。2021年度は4つある研究項目に関して以下の研究成果を上げた。(1)小分子RNAを介したリボソーム停止のゲノムワイドな解析: 理研岩崎研との共同研究により、野生型シロイヌナズナ、および変異型シロイヌナズナを用いてダイソームプロファイリングを行った。本研究は高感度でリボソーム停滞部位を検出するために必須である。(2)リボソーム停止機構の生化学的解析: 試験管内実験により、SGS3のリボソーム停滞に必要/不必要なドメインを明らかにした。本研究は小分子RNA依存的リボソーム停滞機構の理解に重要である。(3)リボソーム停滞複合体の構造解析に向けた条件検討: タグ配列をN末端に付加した標的RNAの新生ペプチド鎖でリボソーム-SGS3-microRNA-AGO複合体の精製を試みた。量こそ少なかったが、初めて複合体を生成することに成功した。(4)リボソーム停滞が植物生理に与える影響の解析: TAS3 RNA上でのリボソーム停滞が起こらない変異体を立命館大学の竹田篤史博士との共同研究を通して作成している。本変異体を解析することでリボソーム停滞が植物生理に与える影響を調べることが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請書通りに書いた4つの研究項目、1)小分子RNAを介したリボソーム停止のゲノムワイドな解析、2)リボソーム停止機構の生化学的解析、3)リボソーム停滞複合体の構造解析に向けた条件検討、4)リボソーム停滞が植物生理に与える影響の解析のいずれも計画通りにすすんでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
小分子RNAを介したリボソーム停止のゲノムワイドな解析: 昨年度、高感度でリボソーム停滞部位を検出するために、理研岩崎研との共同研究により、ダイソームプロファイリングを行った。今年度はそのデータを解析し、新しいリボソーム停滞部位を同定する。リボソーム停止機構の生化学的解析: 昨年度、試験管内実験により、SGS3のリボソーム停滞に必要/不必要なドメインを明らかにした。本年度は、それらの変異が生体内でもリボソーム停滞に影響を及ぼすのかを調べるためにダイソームプロファイリングを行う。リボソーム停滞複合体の構造解析に向けた条件検討: 昨年は、リボソーム-SGS3-microRNA-AGO複合体を、タグ配列をN末端に付加した新生鎖で精製しようと試みた。しかし非常に少ない量の複合体しか精製できなかったため、本年度はSGS3とAGOに異なるタグを付け、タンデムアフィニティー精製によって同複合体の精製を試みる。成功した場合、共同研究により構造解析を行う。リボソーム停滞が植物生理に与える影響の解析: TAS3 RNA上でのリボソーム停滞が起こらない変異体を作成をすることで、リボソーム停滞が植物生理に与える影響を解析する。本年度も、引き続き変異植物の作成選抜を行う。本研究は立命館大学の竹田篤史博士の協力を得て行う。
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