本研究では植物科学、生化学、生命情報科学、そして構造生物学を駆使することにより、小分子RNA依存的なリボソーム停止機構を統合的に理解し、「非コードRNAにコードされたペプチドがリボソーム内に留まることで小分子RNAの生産を調節するというタンパク質の新しいファセットに光を当てる」ことを目的としている。2022年度は以下の研究成果を上げた。 (1) 小分子RNAを介したリボソーム停止のゲノムワイドな解析 昨年度、高感度でリボソーム停滞部位を検出するために、理研 岩崎信太郎 博士との共同研究により、ダイソームプロファイリングを行った。データを解析した結果、一部はモノソームプロファイリングの結果と一致していたが、多くは新規のリボソーム停滞部位であった。予想外であったこととしては、小分子RNA結合部位の上流でリボソームが停滞していることが、モノソームプロファイリング、および生化学的解析で明らかであった複数の標的RNA上で、ダイソームが検出されない例が複数見られたことである。今後、ダイソームが形成に必要とされる条件なども解析するつもりである。 (2) リボソーム停滞複合体の構造解析に向けた条件検討 複数の手法を用いてリボソーム-SGS3-RISC-標的RNA複合体の精製を試み、高効率で複合体を精製する手法を確立した。精製したサンプルを理研のクライオ電子顕微鏡で解析した結果、ダイソーム、トリソームといった、リボソームが衝突した構造を得ることができた。なお、本研究は、理研の伊藤 拓宏 博士、伊藤(後藤) 桜子 博士との共同研究により行われた。
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