研究領域 | マルチファセット・プロテインズ:拡大し変容するタンパク質の世界 |
研究課題/領域番号 |
21H05728
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山本 詠士 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 講師 (00779340)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 非膜性構造体 / 天然変性タンパク質 / 分子動力学シミュレーション |
研究実績の概要 |
細胞内の液-液相分離現象によって,RNAや天然変性タンパク質が膜を有さない構造体(非膜性構造体)を形成する.非膜性構造体を形成する天然変性タンパク質は,立体構造が安定している構造ドメインと柔軟に構造が変化する天然変性領域を持つものが多いことが知られているが,そういった構造的な特徴が非膜性構造体形成において果たす役割については,不明な点が多い.本研究では非膜性構造体内部におけるタンパク質の相互作用およびダイナミクスを分子レベルで解明すること目指し,非膜性構造体の分子動力学シミュレーションを行った. 本年度は,幾つかの天然変性タンパク質について粗視化モデルを用いた分子動力学シミュレーションを行い,粗視化モデルの分子間相互作用の調整と妥当性を実験値と比較しつつ検証した.タンパク質1分子の計算では,慣性半径が実験値と良い一致を示すようパラメータを調整した.また, 神経変性や神経機能障害に関係するFUSタンパク質の低複雑性ドメイン1,000分子で形成される非膜性構造体の粗視化分子動力学ミューレーションを行い,非膜性構造体内部の分子密度が実験結果と良い一致を示すことがわかった.非膜性構造体内部におけるタンパク質の分子間相互作用や拡散挙動について解析した.タンパク質の時系列データから,平均二乗変位,拡散係数のゆらぎ,プロパゲータなどの拡散性を特徴付ける統計量を用いて解析し,粘弾性の効果に加え,タンパク質の拡散係数が顕著なゆらぎを示す異常拡散をすることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度計画していた研究項目について研究を実施し,概ね順調に進展している.当初の予定通り粗視化モデルの調整・検証および低複雑性ドメインのみで形成される非膜性構造体の分子動力学シミュレーションを行い,顆粒内部での分子挙動を解析できた.
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今後の研究の推進方策 |
今後は天然変性領域および構造ドメイン領域を含むタンパク質により形成される非膜生構造体の粗視化分子動力学シミュレーションを行い,構造ドメインおよび天然変性領域の分子挙動について解析する.
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