メンブレンコンタクトサイト(MCS)はオルガネラ間の機能連携や分子交換に重要な働きを担い、オートファジーにおいては小胞体(ER)から隔離膜(IM)への脂質のバルク輸送の場として機能する。通常COPII小胞の形成に働くSec因子群は栄養飢餓時、構造変換を経てAtg因子群とともにIM-ERコンタクトを形成し、脂質輸送の場を構築するが、その分子基盤は不明である。これまでの知見から、IM-ERコンタクトの実体はSec因子とAtg因子が液-液相分離することで形成された液滴であることが強く示唆された。本研究ではこれらタンパク質群および脂質膜を用いてin vitroで隔離膜-小胞体コンタクトを再構成し、その液滴としての性質および構造的特徴、液滴を構築する相互作用基盤、そして膜間の脂質輸送を支える分子基盤を明らかにする。 本年度も引き続き、アミノ酸を枯渇させると形成されるSecボディという液滴状の構造体が、オートファジーの進行に重要な役割を果たしているのではないかという仮説のもと、Secボディの足場である天然変性タンパク質Sec16の調製ならびに相分離実験を試みたが、得られた濃度の精製タンパク質では、in vitroでの相分離は確認できなかった。そこで、精製タンパク質を用いた高速AFM像の取得を行った。マイカ上に脂質を展開し、Sec16とAtg2の観察を行ったところ、膜上で相互作用していることを観察することに成功した。また出芽酵母を用いて、MCSに局在するSec16、Sec31などのERES構成タンパク質と、オートファジー基質を包み込む隔離膜に局在するAtg2、Atg9の動的な振る舞いについて測定を行った。その結果、Atg2とSec因子はどちらも相分離状態であることが強く示唆された。さらに哺乳類特異的なMCS局在オートファジー因子も液滴を形成することを新たに見出した。
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