メゾスケールのDNA構造は、近年、クロマチン構造の構築原理を理解する上で注目されており、盛んにそのモデリングが行われている。このモデリングでは、主に巨視的な構造情報が用いられているが局所的な構造ゆらぎの情報は使われていない。二本鎖DNAが元来持つ構造ゆらぎや、それに対するエピゲノム修飾・溶液環境・タンパク質の結合の影響はよく分かっていない。現状では、局所的なDNA構造のモデリングは計算科学に依存しているところが大きく、構築されたモデルから微細な構造を議論するのは難しい。このような背景のもと、最近 申請者らはNMRを用いた方法論を開発し、二本鎖DNAの構造ゆらぎを1塩基対レベルで明らかにした。本研究では同様な手法を用いて、二本鎖DNAが元来持つ構造ゆらぎや、その構造ゆらぎに対するエピゲノム修飾・溶液環境・タンパク質の結合の影響を解析し、構造揺らぎにどのような法則性があるのかを明らかにする。 今年度は、まず核内の溶液環境を模倣できることが言われているPEG200を添加した二本鎖DNAの動的構造解析に取り組んだ。PEG200は過去の論文に従って30%の濃度にしたが、この濃度ではPEG200由来の1H NMRシグナルが巨大となり、観測対象のイミノプロトンのシグナルが全く観測できなかった。そのため、イミノプロトンの領域だけを選択的に励起するパルス列を組み込んだ新しいパルスプログラムを作成し、動的構造解析を行った。興味深いことにPEG200存在下ではATペアよりもGCペアの安定性が変化することが分かった。この時点(2022年5月20日)で学術変革領域研究(B)に採択され、本研究は廃止となったため、研究の方向性をシフトし、本研究をペンディングした。
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