SMC(Structural Maintenance of Chromosomes)はゲノムモダリティ制御の中枢を担うDNA結合性ATPaseファミリーであり、バクテリアから真核生物まで広く保存されている。しかし、真核生物の起源となった原核生物ドメインであるアーキアでは、既知のSMCタンパク質をもたない種が少なからず存在する。また、このようなアーキアの一群であるテルモプロテウス目アーキアは、Arcadin-4と呼ばれる機能未知のSMC様タンパク質を有する。本研究は、Arcadin-4の機能解明を通じて SMCファミリーによるゲノムモダリティ制御の多様性を明らかにするとともに、多様性の裏返しとして存在する共通原理の解明を目指す。具体的には、テルモプロテウス目に属するアーキアPyrobaculum calidifontisがもつArcadin-4の機能を生化学やNGS技術を駆使して明らかにする。今年度の研究内容は以下の通りである。
Arcadin-4の生化学的性質を解析するため、組換え型Arcadin-4タンパク質の発現・精製を行った。得られた組換えタンパク質をHS-AFMで観察したところ(国立遺伝学研究所との共同研究)、SMC タンパク質に特徴的なリング状のダイマー構造がみられた。一方、Arcadin-4では2つのダイマーが八の字型に会合したユニークな複合体構造も観察された。続いて、組換えArcadin-4タンパク質をDNAと混合した条件でHS-AFM解析を行ったところ、Arcadin-4が一本鎖DNAに特異的に結合することを示唆する結果が得られた。これらの結果は、Arcadin-4が他のSMCタンパク質とは異なったユニークな分子機能を有する可能性を示唆している。
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