公募研究
クロマチン構造の基本単位であるヌクレオソームのコア構造から突き出ているヒストンのテイル構造は天然変性領域で非常に動的であるため、X線結晶構造や電顕構造では見えていない。しかしながら、このヒストンテイルには多数の翻訳後修飾が入ることによって、クロマチンの構造や機能を変化させるため、非常に重要な領域である。また、ヌクレオソーム間をつなぐリンカーDNAもリンカーヒストンH1が結合した状態でないとX線や電顕の構造では観測できないため、非常に動的である。しかしながら、ヒストンテイルは、ランダムにふらふらしてヌクレオソームの外側に露出しているのではなく、リンカーDNAやヌクレオソームDNAにある程度動きを制限されて機能している。本研究では溶液NMR法を用いて、ヒストンH3のN末テイルの動的挙動を解析した。その結果、ヌクレオソームのリンカーDNAがヒストンH3のN末テイルと非常に弱く相互作用していて、そのDNAとの相互作用は残基によって異なることが明らかになった。リンカーDNAが無いとヌクレオソーム中のヒストンH3のN末テイルはコアDNAと相互作用する頻度が高くなり、アセチル化酵素Gcn5によるH3の14番目のリジンのアセチル化反応が阻害された。また、リンカーヒストンH1がヌクレオソームに結合すると、対称であったヌクレオソーム中のヒストンH3の2本のN末テイルは、左右非対称な動的構造を取うようになったが、アセチル化酵素Gcn5によるH3の14番目のリジンのアセチル化反応はリンカーヒストンH1が結合していない時と同程度の速さであった。これらの結果は、ヌクレオソーム中のヒストンテイルの動的構造変化が翻訳後修飾を制御していることを示され、ヌクレオソーム中のヒストンテイルの動的構造もクロマチン構造の変化に寄与している可能性が示唆された。
令和4年度が最終年度であるため、記入しない。
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