染色体内のクロマチンループを作るコンデンシンは、ループを作るだけではなくDNAの中心軸自体がねじれた構造 (スーパーコイル構造)をも取り入れる。このスーパーコイル形成の染色体に対する影響は未解明問題の一つである。 染色体凝縮に対するスーパーコイル生成の影響を調べるため、R3年度に構築したtwistと曲げの弾性を取り入れた力学モデルに基づき、ねじれ変形を取り入れたループ生成のシミュレーションを行った。ここでは、モデル高分子をねじる速度や鎖の端点間距離をパラメータとして、これらを変化させながらシミュレーションを行った。 その結果、モデル高分子をねじる速度が速いほど、そして端点間距離が小さいほど、スーパーコイルが生成しやすいことが明らかとなった。また、スーパーコイルは、ループの外側を巻き込み、ループ全体が回転することで、生成する。そのため、正味のループの大きさは、ねじれなしで生成したループより大きくなることが明らかとなった。 また、ねじれが重要となる現象として、葉緑体内のcircular DNAの凝集体 (核様体)の振る舞いが挙げられる。京都大学 西村芳樹 助教のグループが、葉緑体内の核様体はスーパーコイルしたDNAを多く含むことと細胞分裂時にはDNAのボンドを切断することが必須であることを示した。さらに、核様体凝縮に比べて、分散の特徴時間が数倍長いことを見いだしている。 そこで、twist変形とボンド切断を取り入れたシミュレーションをR3年度で構築したモデルDNAを用いて行った。さらに、モデルDNAのtwistの巻き数 Twとwritheの巻き数Wrそれぞれの時間発展を計算した。その結果、特徴時間の違いは、トポロジカル不変量であるTw + Wr (=Lk)が保存/非保存時における物理の違いであることを明らかにした。
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