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2021 年度 実績報告書

胚の前後軸を真っすぐにするクチクラによる物理的拘束に関する研究

公募研究

研究領域素材によって変わる、『体』の建築工法
研究課題/領域番号 21H05782
研究機関大阪大学

研究代表者

松野 健治  大阪大学, 大学院理学研究科, 教授 (60318227)

研究期間 (年度) 2021-09-10 – 2023-03-31
キーワード形態形成 / クチクラ / 胚の直線性 / 前後軸
研究実績の概要

多くの動物のからだは、前後軸に沿って真っすぐである。このような高度の直線状構造が形成、維持される機構についてはよく理解されていない。研究代表者は、ショウジョウバエにおいて、初期発生で機能する母性遺伝子の遺伝的スクリーニングを実施し、母性効果を除いたホモ接合体胚が(以下、mobius strip(mobi)完全欠失胚とする)、前後軸を回転軸として「雑巾をしぼったように」ねじれる突然変異を同定した。この胚の神経系の形態がビウスの帯の様に見えることから、同定した突然変異を mobius strip と命名した(未発表)。mobi 完全欠失胚表皮のクチクラ層が形成異常を示すことから、クチクラが胚表皮組織のねじれを物理的に制約しているという仮説を立てた。そこで、本研究では、この仮説を実施することを目的として実験(1)と(2)を実施し、次の成果を得た。
(1)mobi 完全欠失胚におけるクチクラ形成異常の研究
クチクラを可視化できるCalcofluor White 染色を用いて、mobi 完全欠失胚と野生型胚のクチクラを比較した。その結果、mobi 完全欠失胚が水疱状のクチクラに覆われていることがわかった。mobi 完全欠失胚のねじれが顕著になるのは、正常胚でクチクラが形成され始める発生ステージとほぼ一致していた。
(2)mobi 突然変異の責任遺伝子の同定は
遺伝学的な解析を実施し、mobi 遺伝子は第二染色体の左腕に存在する母性遺伝子であり、接合体性の表現型を示さないことを明かにした。この知見をもとに、mobi 遺伝子の母性効果を欠いた雌と、第二染色体左腕の欠失突然変異を有する雄を交配し、得られた次世代の胚が水疱状クチクラ表現型を示すかどうかを指標にして、既存の染色体欠失突然変異系統のスクリーニングを実施した。その結果、mobi 遺伝子座を含むと考えられる染色体領域を特定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

本研究がスタートした時点では、mobi 突然変異は、numb遺伝子突然変異の対立遺伝子であると想定されていた。令和4年度のほとんどの期間を使って実施した実験によって、mobi 突然変異は、numb突然変異系統のバックグラウンドとして存在したことを明かにした。この混乱のため、mobi 突然変異の責任遺伝子の同定を開始するのに手間取った。このため、実験計画を変更する必要と、研究の進捗の遅れが生じた。しかし、現在、この問題を解決できたことから、mobi 突然変異の責任遺伝学を同定するためのスクリーニングは順調に進展中である。

今後の研究の推進方策

(1)mobi 突然変異の責任遺伝子の同定
mobi 突然変異の責任遺伝子(mobi 遺伝子)を同定することは、水疱状クチクラの構造異常の原因を解明するために必要である。mobi 遺伝子の母性効果を欠いた雌と、第二染色体左腕の欠失突然変異を有する雄を交配し、得られた次世代の胚が水疱状クチクラ表現型を示すかどうかを指標にして、mobi 遺伝子座の染色体上の位置を絞り込む。すでに、既存の染色体欠失突然変異系統のスクリーニングが進展しており、これを集中的に実施する。特定した染色体欠失領域に含まれる個々の遺伝子の突然変異についても同様の実験を実施し、早期にmobi 遺伝子を単一遺伝子座として同定する。
(2)クチクラの異常と胚のねじれの因果関係の検討
GAL4/UASシステムを用いて、mobi 遺伝子を組織特異的に発現させることが可能である。mobi 完全欠失胚において、UAS-mobi を胚表皮で特異的に発現させると、クチクラ異常が救済されると予測できる。この時、クチクラ異常が胚のねじれの原因であれば、胚のねじれも同時に救済されるはずである。また、hunchback-Gal4 などを用いて、胚の一部の領域のみでUAS-mobi を強制発現させ、クチクラ異常と胚のねじれの局所的抑制の様子を解析する。これらの実験によって、クチクラ異常と胚のねじれの因果関係を解析する。
(3)胚のねじれをクチクラが拘束する機構の解析
Cuticular protein 11A (Cpr11A) の突然変異体では、クチクラの胴囲方向の剛性が低下する。Cpr11Aホモ接合体で胚のねじれがおこるかどうかを調べる。胚のねじれが観察された場合、野生型胚では、クチクラの剛性によってねじれが拘束されていることが示唆される。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 学会発表 (1件)

  • [国際共同研究] The University of Manchester(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      The University of Manchester
  • [学会発表] A novel role of numb prevents embryo from antineurogenic through the inhibition of Notch signaling downstream genes2022

    • 著者名/発表者名
      Elzava Yuslimatin Mujizah, Satoshi Kuwana, Takuma Gushiken, Kenjiroo Matsumoto, Tomoko Yamakawa, Martin Baron, Kenji Matsuno
    • 学会等名
      第74回日本細胞生物学会大会

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公開日: 2023-12-25  

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