研究領域 | 素材によって変わる、『体』の建築工法 |
研究課題/領域番号 |
21H05784
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
古川 可奈 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(PD) (70807461)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2024-03-31
|
キーワード | 気管 / 輪状軟骨 / コラーゲン線維 / 再生医療 / 組織形成 |
研究実績の概要 |
我々は、呼吸をして生きている。どんな動きをしても呼吸を維持し続けることができるのは、気管が特殊な組織構造を持つためである。気管は主に軟骨・靭帯・平滑筋・上皮細胞で構成されており、軟骨と靭帯で構成された特異的なパターン構造を持つ。特に、軟骨が馬蹄型を取ることが、気管の管構造維持に必須である。しかし、この軟骨の特殊な形状を生み出すメカニズムは不明である。本研究では、コラーゲン線維の形成タイミングに着目し、申請者が確立した誘導法を用いて輪状靭帯・輪状軟骨外膜のコラーゲン線維による軟骨細胞の動きの制御解析から、輪状軟骨の“形”が作られるメカニズムの解明に挑む。 生体内では深部に気管は位置しており、軟骨・靭帯層の上部に外膜等の組織があることから胎児気管を用いたライブイメージングではコラーゲン線維の形成を解析することは困難である。そこで令和3年度は、コラーゲン線維の形成をライブイメージングにて捉えるために培養下で生体に近いパターンを持った軟骨細胞シートを形成すべく、PDMS凹凸基質デバイスの形状について検討した。合わせて、発生期の気管におけるコラーゲン線維の形成状態についてSHG顕微鏡、免疫組織染色法を用いて解析を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの解析により、発生期の気管では上皮細胞層が一時的にフラットから波形になり再びフラットになることが観察された。この波形の上皮細胞層が外腔側へ突出している場所に間充織細胞が凝集することで輪状軟骨の形成場所がある程度確定するとの仮説を基に、凹凸基質デバイスの形状を検討することにした。発生期の気管の組織形態変化を模すためには、フラットな基質から凹凸基質になり、再びフラットになる必要がある。そこで基質に両端から張力を加えフラットになるかシミュレーションを用いて検討した。基質の中央部に矩形波の凹みを作製したものでは一定の張力をかけても凹みの深さに大きな変化は観察されず、基質全体が歪むという結果が得られた。正弦波を持つ基質では凹みの深さが減少するとの結果が得られた。また、発生期の気管におけるコラーゲン線維の形成状態についてSHG顕微鏡を用いてマウス胎児気管を観察した結果、E13.5やE14.5においてはっきりと観察できる程度のコラーゲン線維の形成は成されていないことがわかった。一方、免疫組織染色を用いた解析では、E13.5からE14.5においてタイプIIコラーゲンの染色がタイプIコラーゲンの染色に先行して強くなることがわかった。こうした結果が得られるほど研究がスムーズに進められていることから、おおむね順調に進んでいると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和3年度の解析により、凹凸基質の形状は正弦波が有用であることがわかった。この結果から、今後は分化誘導系と正弦波をもつ基質を用いて培養することで顕微鏡下にて生体を模した環境下でのライブイメージングを行い、コラーゲン線維の形成が輪状軟骨・輪状靭帯の組織形成にいかに寄与していくか解析を進める。また、発生期の気管間充織細胞の分化は靭帯細胞や軟骨外膜細胞への分化に先立って軟骨細胞への分化が先行することが示唆される結果を得ることが出来た。この結果から、タイプIIコラーゲンに重点を置いてライブイメージングで得られるデータの解析を進めたい。そこで、Sox9-GFPマウスやCol2a1-EGFPマウス由来のES細胞を用いた分化誘導系にて今後の解析を進めていく。
|