研究実績の概要 |
マウスは、20個近い受精卵が等間隔で着床できる。着床した胚は一つずつ、子宮側から分泌される細胞外マトリクス(ECM)を素材とする特殊な構造である脱落膜に覆われて発生する。しかし、多数の胚が子宮内の限られたスペースで等間隔で整列し、お互いに干渉することなく、整然と一定方向に発生する仕組みは明らかでない。脱落膜は、着床後1日から2日以内に子宮内に輸送された胚の数だけその周りに形成される。その間、ラミニン、コラーゲンなどのECMが分泌されるとともに、様々な分解酵素(MMP)が活性化されることでECMのリモデリングが起こる。そこで、今年度は、脱落膜で発現するECM関連分子について発現解析を行った。発現解析は、mRNA及びタンパク質レベルでin situ hybridization法と免疫抗体染色法を用いて解析した。その結果、脱落膜の中でも胚近傍でコラーゲンタンパク質が発現し、離れた領域でラミニンタンパク質が発現していた。また、ECM分解酵素である MMPや分解酵素の抑制分子であるTIMPは、ラミニンとコラーゲン分子の発現ドメインに近接して発現していた。また、主要なECM構成分子であるLama遺伝子座には、融合タンパク質として蛍光蛋白質をノックインし、Col4遺伝子座には、融合せずに蛍光蛋白質をノックインした遺伝子改変マウスをそれぞれゲノム編集法を用いて作製した。実際両遺伝子のヘテロ変異胚において、ノックインされた蛍光タンパク質の発現を共焦点レーザー顕微鏡を用いて確認した。結果、変異体胚では、内在性のLaminin, collagen遺伝子産物と同様な発現パターンを示していた。
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