研究領域 | 実世界の奥深い質感情報の分析と生成 |
研究課題/領域番号 |
21H05800
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
國松 淳 筑波大学, 医学医療系, 助教 (50632395)
|
研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
|
キーワード | 霊長類 / 呼吸 / 眼球運動 / 視覚 / 自律神経 |
研究実績の概要 |
スポーツ選手が大切な場面で「息を整える」ように、私たちは呼吸を操作することで無意識に感覚を操作しているのかもしれない。これまで感覚系が自律神経やホルモンを通じて呼吸に影響を及ぼす機構はよく研究されてきたが、その逆の呼吸が感覚系にもたらす効果についてはほとんどわかっていない。本研究では、①ヒトを対象とした心理実験と、②ニホンザルを対象とした神経生理学実験によって、呼吸と質感認知の関係とその神経メカニズムを解明することを目的とする。 当該年度においては、サルの呼吸を正確にモニターする方法を確立した。覚醒状態のサルは装置を触ってしまうため、ヒトと同じ方法を用いることは難しい。そこで、非接触に鼻腔の温度を測定することで、安定して呼吸位相を計測することに成功した。同方法は、サルの行動を制限することなく自然な呼吸を記録できるという点でも他の方法を比べて優れている。現在、この研究結果を国際雑誌への投稿に向けて論文にまとめている。 また、ヒトとサルを対象として、行動課題を用いて呼吸の位相による行動の変化を調べた。手の運動などの負荷の大きい動作を繰り返すと呼吸頻度に影響が生じるため、負荷の少ない眼球運動を行動指標とした。これまでに、吸息期に眼球運動のターゲットが提示された場合に、呼息期に比べて反応潜時が短縮するという結果が得られている。この結果は、吸息期において視覚情報処理が促進されていることを示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画の開始1年目である令和3年度は、呼吸測定に用いる温度センサーや刺激提示システムなど、研究遂行に必要な実験設備の整備を行うことができた。更に、動物への外科的手術や初期訓練を終了させ、行動課題の訓練を進めている。試行錯誤を繰り返す中で、行動課題の細かなパラメータの決定に必要な行動データが徐々に集まってきている。研究成果の一部を学会等で発表するとともに、論文を作成することができた。令和4年度中には採択されることが見込まれ、当初の計画以上に進展している。一方で、ヒトを被験者とした心理実験については感染拡大によって、被験者を集めることが難しい状況が続いている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、①ヒトを対象とした心理実験についてはcovid-19の感染拡大状況を注視しながら慎重に進めていく。②サルを対象とした神経生理学実験については、上記のように当初の計画以上に計画を遂行できている。安定した呼吸のモニター法を確立できたことで、呼吸を行動の指標とした行動課題の作成が可能となった。今後は随意呼吸を誘発するなど、研究の大きな展開が期待される。また、吸息期に視覚情報処理が促進されるメカニズムを調べるために神経活動記録を開始する。
|