触り心地を制御することにより,心を満たす上質な製品の設計を可能とするため,ヒトの「心地良い触感」を生み出すメカニズムの解明が望まれている。一方,触り心地は,対象の表面粗さ,摩擦や硬さなどの複雑な物性とヒトの感覚が相互作用によって形成されると考えられるが,ヒトがどのようなメカニズムで「心地良い触感」を感じるかは未だ謎である。本研究では,対象の柔らかさに焦点を当てて,触り心地と柔らかさの関係性を検討した上で,心地よい触感を生み出す多階層な脳機能を調べることを目標としている。本年度は,前年度の成果に基づいて,さらに楕円体の柔らかさ刺激を作成して,手全体で対象を握る際の心地良さ知覚実験を実施した。その結果,対象の柔らかさが5kPaから170kPaの範囲において40kPa付近の刺激に最も心地良いと感じられたことがわかった。一方で,同様な刺激を用いた柔らかさ知覚実験では,このような傾向が見られず,必ずしも柔らかいものが心地良い触感が生まれるではないことが明らかにした。現在,この成果を元にfMRI実験を設計・実施しており,心地良い触感が生まれる際の脳内処理ネットワークを検証している。今後,これまでの研究成果を包括的に検討した上で,心地良い触感を感じるメカニズムの解明に努める。
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