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2021 年度 実績報告書

部分グラフ列挙問題で用いる多項式遅延列挙アルゴリズム設計技法の拡張に関する研究

公募研究

研究領域社会変革の源泉となる革新的アルゴリズム基盤の創出と体系化
研究課題/領域番号 21H05861
研究機関国立情報学研究所

研究代表者

栗田 和宏  国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 特任研究員 (40885266)

研究期間 (年度) 2021-09-10 – 2023-03-31
キーワード部分集合列挙 / 入力制約問題 / 独立性システム
研究実績の概要

本年度は独立性システムに関する列挙問題とマトロイドに関する列挙問題の特殊系となるグラフの列挙問題について研究を行った.
独立性システムの列挙に関しては k -拡張システムの極大解列挙アルゴリズムの構築に取り組んだ.これは定義から, k が定数であるならば多項式遅延で列挙できることがわかった.しかし,この結果の興味深い点は,多項式遅延列挙ができるが入力制約問題が多項式時間で解けるかがわかっていないという点である.そこで,次なる課題として,入力制約問題が多項式時間で解けるかを調べるために具体的な離散構造の列挙問題に取り組んだ.その問題として,マトロイドマッチングについて研究を行った.マトロイドマッチングは組合せ最適化分野で古くから知られる離散構造であり,二部グラフマッチングの一般化となっている.この問題は最適化問題としてはNP-困難であることが知られているが,列挙問題としてみた時,マトロイドマッチングの特殊系の問題は入力制約問題が多項式時間で解けることに気づいた.そこで,マトロイドマッチングについての列挙問題を研究したところ,マトロイドマッチングが2-拡張可能システムであることがわかった.この結果はグラフをハイパーグラフに拡張した場合,ハイパー辺のサイズが定数 k であればマトロイドマッチングは k-拡張可能システムになることがわかった.従って,この構造は多項式遅延で列挙できることがわかったが,まだ入力制約問題が多項式時間で解ける反例は得られなかった.
次に,マトロイドに関連するグラフ上の列挙問題としてはグラフ中の極小な全域2辺連結部分グラフを列挙する問題について研究を行い,グラフが平面的である場合はこの問題は多項式遅延が可能であると予想する.これは平面グラフにおいて,辺連携性と最小サイクルが非常に深い関係があるため,その知見を用いた良いアルゴリズムが設計できるためである.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目標は多項式遅延が容易に可能な離散構造を明らかにすることである.これを実現するため,独立性システムという抽象度の高い離散構造に着目し,入力制約問題を解く列挙アルゴリズムを用いない列挙アルゴリズムの構築を行なっている.そのための重要な離散構造の例としてk-拡張システムが存在することが明らかになり,この構造はマトロイドマッチングという組合せ最適化分野で扱われる多くの問題を一般化した離散構造を含むことがわかった.この結果から,二部グラフマッチングを一般化した多くの離散構造は容易に多項式遅延で列挙できることがわかる.これらの結果から組合せ最適化分野で古くから研究されている多くの離散構造は多項式遅延が容易なことがわかった.一方,これらの結果を進展させようとしたが, k - 拡張システムより一般の独立性システムでは多項式遅延は容易ではなく,事実,kが一般の場合は列挙アルゴリズム分野の長年の未解決問題を含む問題になってしまうことが明らかになった.そこで,今後の研究計画として,独立性システムだけではなく,他の離散構造についてもこれらの結果で得られた知見が使えないかを検討する.

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方策として,まずは去年度に得られた結果をまとめて論文化することが重要である.去年度得られた結果は本研究の目的から興味深いと感じる内容だったが,技術的な貢献は少なく,現在の結果だけで論文化するには難しいと考えていた.しかし,現状 k - 拡張システムに関する良い結果を得るための明確な方針がないため,現在得られている結果までをまとめて論文化することを目指す.
これらの論文化をした後の研究として,マトロイドと関連するグラフ上の問題について研究を考えていたが,これまでの研究で,列挙アルゴリズム分野の大きな未解決問題である凸多面体の頂点列挙が部分集合列挙問題として,定式化できることに気づいた.さらに,凸多面体の頂点列挙に関しては多項式遅延ではない列挙アルゴリズムが多く,本研究で得られた知見がどの程度適用可能なのかも興味深い.このように今まで研究していたグラフや独立性システム以外の離散構造からこれまでの研究を見返すことで,容易に多項式遅延で列挙可能な離散構造の更なる発見を目指して研究を行う.この問題は一般の凸多面体の頂点列挙は長年の未解決問題で解決が困難であるため,特殊な凸多面体について扱う.具体的にはnetwork LPと呼ばれる特殊な線形制約で表現される凸多面体について扱う.この構造は効率よく列挙が可能だが,多項式遅延が可能かは未解決な問題であるため,最初の一歩の研究として適切な問題であると考える.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2022 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Linear-Delay Enumeration for Minimal Steiner Problems2022

    • 著者名/発表者名
      Yasuaki Kobayashi, Kazuhiro Kurita, Kunihiro Wasa
    • 雑誌名

      The 41st ACM SIGMOD-SIGACT-SIGAI Symposium on Principles of Database Systems (PODS 2022)

      巻: - ページ: -

    • 査読あり
  • [学会発表] 連結な極小辺支配集合の近似的なトップ-K列挙2022

    • 著者名/発表者名
      栗田和宏
    • 学会等名
      2021年度冬のLAシンポジウム
  • [学会発表] 平面グラフ中の極小全域2辺連結部分グラフの多項式遅延列挙2022

    • 著者名/発表者名
      栗田和宏
    • 学会等名
      情報処理学会 第84回全国大会,革新的アルゴリズム基盤の構築に向けて
  • [学会発表] 解グラフを用いた多項式遅延列挙アルゴリズムの構築技法2022

    • 著者名/発表者名
      栗田和宏
    • 学会等名
      2022年電子情報通信学会総合大会, COMP学生シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] マトロイドマッチングとマトロイド交叉上の独立集合に対する効率良い列挙,2021

    • 著者名/発表者名
      栗田和宏
    • 学会等名
      夏のLAシンポジウム

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公開日: 2022-12-28  

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