金属ナノ粒子は表面プラズモン共鳴現象と呼ばれるバルク材料とは異なる特性を示す。中でも、棒状の金ナノ粒子(金ナノロッド)は近赤外領域に強い吸収を有し、光アンテナや高感度バイオセンサー、医用応用等への応用面で注目されている。この金ナノロッドの性質を制御し、高度に活用するためには、金ナノロッドの配向および集合状態を自在に制御可能にすることが重要である。研究代表者はこれまでに、「DNAブラシ」を利用したシステムに着目し、このDNAブラシに適度な静電相互作用力を賦与した金ナノロッドを吸着させることで、自己組織化的に垂直配向固定化できることを明らかにした。さらに、溶液環境を変えることで基板上で金ナノロッドの配向や集合状態を可逆的に制御できることも明らかにしてきた。一方で、これまでの溶液を変えるシステムでは、位置選択性がない等の課題があり、制御性の高い刺激に応答するシステムへの展開が期待されている。そこで本研究では、制御性の高い刺激である「光照射」による金ナノロッドの集合状態の制御システムを目指した。具体的には、研究代表者が開発してきた表面被覆分子によって温度応答性を有する金ナノロッドを調製し、DNAブラシ基板に吸着させた状態でも温度に応答して可逆的に集合・脱集合可能であることを確認した。さらに、表面被覆分子を検討することで、応答温度の調整を行い、適当な温度で応答可能な金ナノロッドアレイの調製に成功した。続いて、金ナノロッドが有する光熱変換機能を利用し、光照射により局所的にナノ粒子を加熱し、その熱をトリガーとして金ナノロッドアレイの状態を可逆的に制御可能にすることに取り組んだ。温度応答性分子で被覆した金ナノロッドの分散液に光照射を行うことで、金ナノロッドの集合化が誘起できることを確認した。
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