公募研究
本研究では天然の細胞骨格系タンパク質に依らない新規の分子デバイスを設計し,細胞サイズリポソームの変形制御に資するアクチュエータシステムを創出することを目的としている.具体的には,DNAオリガミ技術を駆使することで,複数の変形モードと集合モードを兼ね備えたモジュラーな分子アクチュエータシステムを設計・構築する.研究初年度となる2021年度は,刺激の種類や組み合わせによって異なる変形を示すナノアクチュエータの開発に注力した.グアニン四重鎖形成やi-モチーフ形成を利用した収縮機構とDNAの鎖置換反応に基づく変形機構を併用することで,イオン環境および分子信号(シグナルDNA)に応じて特異的な形状変化を示すナノアクチュエータを設計・構築した.ナノアクチュエータの形状としては,アーム型,スプリング型,二次元格子型の三種類を設計し,それぞれについて,ゲル電気泳動などの生化学的手法と液中原子間力顕微鏡を用いた直接可視化により,構造形成および刺激依存的・シグナル分子依存的な形状変化を確認した.二次元格子型のナノアクチュエータについては,格子の各フレームの形状を独立に制御できるように設計することで,イオンやシグナルDNAの組み合わせに応じて,十数種類の異なる形状への変形を実現した.さらに,鎖置換反応によりシグナルDNAを任意に入れ換えることで,ナノアクチュエータの繰り返しの動作や形状変換が可能であることを実証した.
2: おおむね順調に進展している
イオン種やシグナル分子の組み合わせに応じて,特異的な変形を示す分子アクチュエータをDNAオリガミ法により設計・構築し,性能を評価した.一部のアクチュエータに関しては,多量体化による大型化が実現しており,概ね計画通りに進捗している.
2022年度は,ナノアクチュエータを環境依存的・シグナル依存的に集積させる機構の開発に重点を置く.特に,ナノアクチュエータの駆動に必要な刺激とは干渉しない外部刺激で集積および離散を誘導できるように設計する.アクチュエータの駆動と集積をそれぞれ独立に操作できるように設計することで,モジュラリティに富んだアクチュエータシステムの実現を目指す.
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Macromolecules
巻: 55 ページ: 15-25
10.1021/acs.macromol.1c01894