異なる刺激種に対して特異的な変形を示す多重応答性分子アクチュエータの構築し,それらの構造と力学的特性について定量的に解析した.特に,スプリング型および二次元格子型の二種のアクチュエータについて機構改良を進め,それぞれについて,生化学的実験手法と原子間力顕微鏡(AFM)を用いた直接可視化により刺激依存的・シグナル分子依存的な構造変化を評価した. グアニン四重鎖形成を利用した動作機構とDNA分子の鎖置換反応に基づく動作機構を併用することで,カリウムイオン濃度の変化および分子信号(シグナルDNA)に応じて,特異的なスプリング形状へと変形するナノアクチュエータを開発した.AFMを用いた形状解析により,刺激の種類に依存して,ピッチや直径が異なる特異的ならせん構造へと形状変化することを示した.光ピンセットを用いた単分子解析により,アクチュエータの形状だけでなく,その機械的特性についても刺激依存的に変換できることを明らかにした. 二次元格子型のナノアクチュエータについても,構造バリエーションの作製を進めた.i-motif形成を利用した変形機構と二重らせん形成に基づいたロック機構を組み合わせることで,pH変化およびシグナルDNAに応じた特異的な変形を実現した.鎖置換反応によりシグナルDNAの入れ換えを可能とすることで,繰り返しの動作や形状変換を実現した. さらに,各アクチュエータを連結・多量体化することで,個々のアクチュエータの変形を累積させ,より大規模な変形を生み出すことにも成功した.
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