研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
21H05868
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢島 潤一郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00453499)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | バイオナノマシン / バイオマイクロマシン |
研究実績の概要 |
タンパク質の相互作用能や自己組織化能、及びDNAナノ構造体による制御能によって、主に細胞骨格からなる高次構造体をリポソーム内で構築し、リポソーム形態がダイナミックに変わる仕組みを実装、及びそれらを統御する分子システムの理解を目指した。本年度は、(1)リポソームにタンパク質を効率的に内封する方法を検討しつつ、(2)アクチンフィラメント依存性モータータンパク質、及び結合タンパク質、もしくは、微小管依存性モータータンパク質、及び結合タンパク質をリポソームに封入し、細胞骨格の動態を定量できる実験系の確立を行ってきた。(1)に関しては、リポソームに封入するタンパク質を数マイクロリットル程度の容量で比較的再現よく封入できる条件を見出しつつある。また、他の公募班員が有する微細加工技術によって、デバイスによるリポソームへのタンパク質封入条件の検討も進めた。加えて、細胞骨格、または、モータータンパク質や結合タンパク質をリポソーム表面にbiotin(Avidin)、NTA(Ni)や特定の脂質成分と相互作用させる条件検討を、リポソーム内、及びカバーガラス表面上で行った。(2)に関しては、リポソーム、または液滴(ドロップレット)に蛍光標識したアクチンフィラメント、及び内在的に脂質結合ドメインを尾部に持つミオシン、またはアクチンフィラメント、及びHis-tagを有するアクチン結合タンパク質(アニリンやアクチニン)とミオシンミニフィラメントを高濃度で内封し、その中で起きる細胞骨格のダイナミックな動態のイメージング方法を検討した。また、リポソームを構成する脂質成分とタンパク質との相互作用の有無、モータータンパク質濃度、及び脂質濃度条件の検討を行い、リング状構造体・ランダムネットワーク構造体・リポソーム膜Blebの形成と退縮を行う条件を見出しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始時期が遅かったこと、新型コロナウイスル感染予防・防止のため、研究室内での研究活動が一部制限されたことに加え、リポソーム内の細胞骨格の振る舞いをイメージングする際に退色の進行が急激に起き、イメージングの質に課題があり、当初の計画通りに研究が進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
主に細胞骨格微小管から構成される伸縮する高次構造体分子アクチュエータの実現に向け、同一キネシン分子による微小管上での力発生方向の制御を実現する。この制御には、キネシン分子の運動支点をN末端とC末端とに変えることで、微小管上での運動方向を変えるキネシン-14の特性を利用し、DNAオリゴや光応答性タンパク質を活用して、キネシン-14の運動支点位置を変えるシステムの検証を行う。イメージング時の退色の進行を減じるため、現行のイメージングシステムにスピニングディスク方式共焦点顕微ユニットの導入を検討する。加えて、同一リポソーム内にアクトミオシン系と微小管キネシン系の両方の高次構造体分子アクチュエータが機能する条件検討を行う。
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