研究実績の概要 |
タンパク質の相互作用能や自己組織化能によって、主に細胞骨格からなる高次構造体をリポソーム内で構築し、リポソーム形態がダイナミックに変わる仕組みを実装、及び、それらを統御する分子システムの理解を目指した。本年度は、昨年度から検討してきたリポソーム内への細胞骨格アクチン、アクチン依存性モータータンパク質、及び、アクチン結合タンパク質の封入方法の改良を進めるとともに、課題であったイメージング時における蛍光色素の褪色問題の改善を行った。後者においては、褪色防止剤の内容量を最適化し、観察にタイムラプス用シャッターを付属した共焦点スキャナーユニットを用いることで大きく改善した。改良した実験系に温度制御ステージを統合し、(1)リポソーム膜上のミオシン駆動のアクチンフィラメントの運動条件の検討を行い、(2)アクチン依存性モータータンパク質、及び、結合タンパク質を封入したリポソームの変形を目指した。(1)に関しては、ホスファチジルイノシトール4,5ビスリン酸(PI(4,5)P2)との結合部位を有するミオシンを、PI(4,5)P2を含むリポソームに内封し膜に比較的弱く結合させることで、ミオシンによるアクチンフィラメントの運動が再現良く観察できた。リポソームは球状であるため、アクチンフィラメントの詳細な動態観察には3次元空間をイメージングする必要があり、今後の課題となった。(2)に関しては、リポソーム内に封入するアクチン、ミオシンの濃度の適量比、膜成分、チャンバー温度を検討し、リポソーム膜が大きくくびれたり、分割したりする条件を見出した。リポソームに封入したATPをエネルギー源とするアクトミオシン系によりポソーム膜を大きく変形することが可能となり一定の成果を得たが、今後はリポソームの変形を制御する分子システムの導入が課題となる。
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