研究実績の概要 |
本研究では4,4’-bipyridine に2-hydroxymethyl-12-crown-4-ether、および1-bromoheptane を導入し、ゲスト応答性を示す電気化学的応答性の分子の構築を目指した。新規のクラウンエーテル修飾ビオローゲンであるN-(2-methyl-12-crown-4-ether)-4,4'-bipyridinium bromide (CRB)および2-3-2 1-(hepthyl)-1’-(2-methyl-12-crown-4-ether)-4,4’-bipiridinium dibromide (HCRB)を合成した。また、合成した新規分子に対してサイクリックボルタンメトリーによる物性測定を行った。結果、アセトニトリル中でCRBは第一還元波のピークがわずかに貴にシフトし、第二還元波が大きく貴にシフトした。分子軌道エネルギー準位計算により、このシフトがリチウムイオンの包接によるものであると考えられる。 またCRBの溶液にリチウムイオンを添加した際には酸化波が消失した。これは、分子軌道計算から、電子がリチウムイオンに非局在化しており、分解反応が起こったためと考えられる。水中ではCRBのリチウムイオンによるピークシフトは観測されなかった。これは12-crown-4-etherが水中ではリチウムイオンと包接しないためと考えられる。 HCRBについてはアセトニトリル中においてピークシフトがわずかに観測された。この原因としてカチオン種とリチウムイオンとの静電気的な反発によりリチウムイオンあまり包接しなかったことが考えられえる。 このように、溶液中での酸化還元応答性およびリチウムイオンの包接に対する応答性を実現することには成功したものの、分子間相互作用を生じさせるための分子設計を行うと還元体が不安定になることが明らかになった。
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