研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
21H05871
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳澤 実穂 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (50555802)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 相転移 / 人工細胞 / 細胞間伝播 |
研究実績の概要 |
脳機能の本質は、細胞間での電位パルスによる高速な情報伝達にある。しかし、物質輸送を必要とせずに情報伝達ができる人工ニューロンを作ることは容易ではない。しかし、最近、申請者らは、高分子ゲルを内包した人工細胞中の線状高分子が、僅かな力学的刺激で配向し、その配向波が膜接着した隣接細胞にも高速で伝播することを発見した。この現象を利用すれば、生命のニューロンとは異なるメカニズムで機能する人工ニューロンを創造できるはずである。ニューロンの軸索は、軸方向に配向した高分子の束とみなすことができるため、課題は隙間なく1次元集積した人工細胞集積体内で高分子配向波を高速伝播させ、リセットすることである。そこで、本研究では、申請者らが確立した人工細胞集積体の構築技術と高分子配向波の細胞間伝播を組み合わせ、隣接する細胞間で線状高分子の配向情報を高速伝達し、リセット後に再配向可能な人工ニューロンを創造する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度において、以下の3つの成果が得られた。 ① 物理ゲルと線状高分子を内包した人工細胞が、力学的刺激によって配向秩序化することが分かった。その際に、線状高分子と、系の体積が小さく、表面に膜界面が存在する必要があることが明らかとなった。 ② 結晶の融点以上への加熱と力学的刺激により、配向秩序が可逆的に制御可能であることが導かれた。 ③ 配向秩序がリセットされる温度は、線状高分子の結晶の融点に近く、秩序構造が線状高分子の結晶である可能性が強く示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
人工細胞間の配向波伝播とその制御を実現するためには、配向のメカニズムを明らかにすることが不可欠である。そこで2022年度は、配向秩序化が人工細胞中でのみ生じる理由を解明するため、人工細胞中の高分子構造を、フーリエ変換赤外顕微分光装置を用いて明らかにする。またその結果をもとに、細胞サイズの空間が高分子の秩序構造形成を誘起するメカニズムを解明する。
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