研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
21H05873
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
石川 大輔 東京工業大学, 物質理工学院, 助教 (00722919)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | DNAナノテクノロジー / 界面膜 / 折り紙 / ナノメカニクス / 細胞力覚 |
研究実績の概要 |
本研究の遂行を通して、生体分子の機械受容機構を人工的に構築するための方法論を提示するため、DNAオリガミ手法を用いて剛体折り紙モデルに基づくナノサイズの人工機械受容チャネルの設計と作製を行った。この人工機械受容チャネルは、複数本のDNA二重らせんを板状に束ねた剛直体を柔軟な1本鎖DNAで連結して形成され、二次元の気水界面において横方向から力学的な力が印可されると開閉するように、DNA二重らせんのもつ「剛」と1本鎖DNAのもつ「柔」の特徴を利用した。さらに、我々の身近に存在する代表的な剛体折り紙であるミウラ折りを、ナノスケールにおける機械受容分子デバイスの変形機構に利用することを考案し、DNAオリガミ手法でナノサイズのミウラ折り(ナノミウラ折り)を設計した。ナノミウラ折りでは、DNA二重らせんの既知かつ不変の位相を利用し、二重らせんで構成される剛直な板状構造体を互いにほぼ逆位相となる180°の位置において1本鎖DNAで連結することで、折り紙の山折りと谷折りを設計した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
人工機械受容チャネルの設計と、山折りと谷折りを複数個所取り入れたナノミウラ折りの設計は、いずれも順調に進展している。1本鎖DNAで連結された駆動部が山折りのみで構成される人工機械受容チャネルに比べ、ナノミウラ折りはジグザグな折り線と山折りと谷折りが組み合わされており、DNAオリガミ設計用CADでは表現することが難しい折り紙構造であったが、設計とシミュレーションを繰り返すことで徐々に最適な折り線の設計に近づくことができた。
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今後の研究の推進方策 |
人工機械受容チャネルを気水界面にて力学的に変形させるために、まずチャネルの部分的疎水化を行う。チャネルを構成するDNAはリン酸基に由来する親水性を本来有するため、疎水性-親水性界面である気水界面に局在させるためには、チャネルに適度な疎水性を付与する必要がある。そこで、DNAの二重らせん形成を利用した手法やDNA骨格のアルキル化を利用して、チャネル上部に疎水基を導入する。その後、界面におけるチャネルの変形過程をin situ蛍光測定および原子間力顕微鏡によるex situ観察から確認する。また、ナノミウラ折りに対して、構成するDNAの塩基配列設計によって一軸方向からの引張力を印可し、ポアソン比が負になるように折りたたまれることを、原子間力顕微鏡観察から実証する。
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