研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
21H05879
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松永 大樹 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (40833794)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 分子ロボット / ストークス流れ / 強化学習 / 最適運動 |
研究実績の概要 |
微小な遊泳体は遅い流れの流体力学に支配され『帆立貝定理』の制約を受ける.帆立貝定理とは1自由度アクチュエータの往復運動(例えば腕の伸縮)では正味の移動を生み出すことができない法則を指し,分子スケールの遊泳体も例外なくこの制限下にある.この制約を掻い潜り特定の方法へと遊泳するためには2つ以上のアクチュエータが往復運動とならない順序で動作する必要がある.N個のアクチュエータを有する分子スケールの効率的な遊泳動作の設計には,移動距離を最大化する最適化問題を解く必要がある.本研究では分子ロボット構造における最適な遊泳戦略を構築すると共に,研究領域メンバーとマイクロサイズの遊泳体の制作を目指す. 1年目の2021年度では強化学習とストークス動力学を組み合わせて,多数のアクチュエータから成る分子ロボットの最適遊泳戦略を探索する解析基盤を構築した.各アクチュエータは伸縮もしくはトルクを負荷し,移動量を最大化するための動作群を強化学習の一種であるPPO(proximal policy optimization)法を用いて探索した.また今回開発した解析基盤が正しく動作しているか確認するため平易な分子ロボット構造を設定し先行研究で知られている最適運動を再現するか確認したところ,二自由度からなる鞭打ちによる遊泳,自然界のクラミドモナスに見られる平泳ぎ運動など先行研究で報告されている遊泳を再現することに成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通り簡素な分子ロボットモデルに対して最適運動を明らかにできたのに加え,スピンオフの研究として線毛型の分子ロボットによる流体の最適輸送に関する研究もはじめており計画以上に研究が進展している.また現在2件の発表を目指し論文を執筆している.
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今後の研究の推進方策 |
今後は初年度に開発した基盤を用い,様々な分子ロボットの最適遊泳戦略を提案するとともに,学術変革領域の他メンバーとともに遊泳する分子ロボットの設計・プロトタイプのデザインを目指す.分子ロボットとして具体的には鞭打ちにより遊泳する機構,また鞭打ちにより流体を駆動する線毛型の機構に対して最適運動の戦略を強化学習により明らかにすることを目指す.鞭打ちにより遊泳する機構に関して前年度の成果より更に発展させ,複数で遊泳するときの最適戦略,壁近傍に境界条件を課したときの最適遊泳の変更について解析を進める.線毛型の機構に関して,自然界で見られる線毛の有効打・回復打の最適動作について,また複数の線毛がある場合の最適協調運動について解析を進める.
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