公募研究
本研究では、最小の二分子膜である脂質ナノディスクをプラットフォームとして、人工の分子デバイス群を複合化することで、生体膜における情報処理機構を再構築する方法論の確立を目的とする。天然の生体膜上では、複数の膜タンパク質が動的に離合集散し、機能連携することでシグナル伝達をはじめとする複雑な情報処理を行っている。ここでは、申請者らがこれまで独自に開発した「脂質ナノディスク」をプラットフォームとして用い、区画化された空間内で人工レセプター等の分子デバイス間における相互作用を制御することで、細胞膜における情報処理システムの人工的な再構築をめざす。脂質ナノディスクをプラットフォームとして生体膜の情報処理機構を再構築する技術を段階的に確立するために、令和3年度は特に(1)脂質 ナノディスク形成ポリマーの合成、(2)脂質ナノディスクの形成と膜物性評価を中心に検討した。(1)に関しては、脂質分子と相互作用することで、ナノディスクを自発的に形成する両親媒性ポリマーを合成し、ライブラリ化した。これまでにナノディスク形成に関して実績のあるポリメタクリレート誘導体を分子骨格として用い、種々の親水性 および疎水性モノマーを共重合することで目的のポリマーを得た。 (2)については、得られたポリマーライブラリを対象として、人工細胞膜リポソームの断片化によるナノディスクの形成について評価した。具体的には、各種リン脂質によって形成されたリポソームからのナノディスク形成について、動的光散乱法および透過型電子顕微鏡観察を中心に実施し、得られたナノディスクの膜物性を熱分析によって評価した。
2: おおむね順調に進展している
当初計画通りの内容に関して、概ね予定通り実施できている。
脂質ナノディスクをプラットフォームとして生体膜の情報処理機構を再構築する技術を次年度は特に(1)ナノディスクへの分子デバイスの組み込みおよび(2)膜融合による分子デバイスのデリバリーについて取り組む予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件) 図書 (2件)
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