研究領域 | 分子サイバネティクス ー化学の力によるミニマル人工脳の構築 |
研究課題/領域番号 |
21H05891
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
林 真人 法政大学, 生命科学部, 助手 (40356259)
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研究期間 (年度) |
2021-09-10 – 2023-03-31
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キーワード | 相分離配向 / 細胞骨格線維 / リポソーム / 人工細胞 / ソフトマター |
研究実績の概要 |
本研究の目的は『分子サイバネティクス』で実現を目指すミニマル脳の構成要素のひとつであるアクチュエータ・ニューロイドに、DNAによる形態制御機構を実装することである。具体的には、ナノ線維であるアクチン線維と長鎖DNAの相分離配向現象を利用して、人工膜小胞からの膜突起の伸長を制御する仕組みの開発に取り組む。本年度は、人工膜小胞に封入する前のバルク溶液において、(1)DNAの複製にともなう相分離配向の誘起、(2)超らせん構造の解消にともなう相分離配向の誘起、の2つの方法で長鎖DNAの排除体積の増加にともなう相分離配向が効率的に誘起される条件の検討を計画していた。(1)については、DNA複製に必要な高Mg2+条件下ではアクチン線維が凝集してしまい、相分離配向が生じないという問題が浮上した。また低Mg2+条件下でもアクチン線維の長さ分布が幅広く、再現性良く膜小胞を変形させることが困難であることが分かった。以上の問題を解決するために、高Mg2+でも凝集せず長さが厳密に決まっている繊維状ファージをナノ線維として利用するために、M13 phageの調製に着手した。(2)については、1か所だけニックの入った環状2本鎖DNAにニック部位周辺の配列とtriplex DNAを形成する1本鎖DNAを添加することで、ニック部位での自由回転を抑制する方法を発案し、ニック入りDNAの合成に取り組んだ。並行して一分子観察により自由回転の有無を判定する実験系の立ち上げにも取り組んだ。現在までに一分子系で使用するDNAの合成に成功し、計測系のチューニングを行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
DNAの複製に必要な高Mg2+濃度ではアクチン線維が凝集する問題が浮上したため、代わりに繊維状ファージを利用することに路線変更した。繊維状ファージ調製法の立ち上げに時間がかかり進捗が遅れている。一方、三本鎖DNAを利用してニック部位での自由回転を抑制する系の立ち上げでは一分子観察に必要なDNAの合成はおおむね完了しており、順調に進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
精製した繊維状ファージを長鎖DNAとともに人工膜小胞に封入し、高Mg2+条件下でも突起形成することを確認する。この系とローリングサークル型DNA複製系を組合せて、DNAの増加に伴い突起形成する条件を検討する。一方で、三本鎖DNAによるニック部位の自由回転抑制系の一分子観察を行い、回転抑制に必要な1本鎖DNAの長さと配列を最適化する。最適化した配列を環状2本鎖DNAに組み込み、1本鎖DNAの有無で超らせん構造に違いが生じることを電気泳動法とAFMを用いて検証する。この環状DNAと繊維状ファージを人工膜小胞に封入し、3本鎖形成と膜突起形成の相関を解析する。
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