世代対称性を持つE6大統一理論において、自発的にCP対称性を破ると、小林益川行列の起源が理解できるだけでなく、超対称性CP問題を解くこともできることは知られていました。そのシナリオにおいては、Vubの小ささが偶発的な相殺により、理解されますが、今回の研究でわかったことは、その相殺がE6固有のものであり、特に、E6の破り方に強く依存していることを確かめました。このことは、Bファクトリーが測定したVubの値が比較的小さい値であった、ということが、E6大統一理論においては、ある特定のE6対称性の破り方を示唆している、という意味で興味深いものです。特に、その破り方の方向が、超対称性大統一理論における最も深刻な問題である二重項三重項分離の問題を自然に解決できうる方向であることは、特筆に値する結果と思います。 また、このシナリオにおいては、ニュートリノセクターにおいて、μニュートリノの質量が0になるなど、あまり、うまくいっていない部分が指摘されていましたが、これまで考慮していなかったある項の効果を調べると、この問題は、なくなることがわかってきました。従って、このまま、ニュートリノに対する予言を計算することが出来る状況になっています。
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