世代対称性を持つE6大統一理論において、自発的にCP対称性を破る模型では、小林益川行列におけるCPの破れが自然に導出される等、興味深い性質を持っている。この模型において、ニュートリノセクターを調べた。その結果、クォークセクターを考えたときには考慮されていなかった相互作用を考慮すると、前の論文で指摘されていたニュートリノセクターの問題が解決されることが判明した。さらに、クォークセクターの主な予言(Vubがλの3乗ではなく、4乗になる、等)はこの相互作用の影響を受けないこともわかってきた。その結果、ニュートリノセクターの予言は、従来のE6大統一理論の予言と同様、大きなニュートリノ混合角、CP位相、となることがわかった。特に、最近、非0であることが実験的に確かめられたVe3は、λのオーダーを予言し、測定値はその予言を確かめたことになる。 自然な大統一理論では、本当の統一スケールは、超対称性標準模型の3つのゲージ結合定数が一致するスケールよりも一般に小さくなるため、次元6の核子崩壊が重要になる。また、SU(5)ゲージボソンだけでなく、SO(10)ゲージボソンやE6ゲージボソンも新たに核子崩壊を引き起こすので、実際にどの程度の寿命になるのか、また、様々な崩壊モードに対する分岐比の予言が重要と思われる。我々はその計算を行い、結果を得た。残念ながら、分岐比は、SU(5)以外のゲージボソンが影響するだけではなく、クォーク、レプトンの混合に強く依存するので、分岐比の違いにより、E6であることを確定するとか、クォーク、レプトンの混合を確定する、というのは、難しい。しかしながら、模型を定めると分岐比に対する予言は可能である。
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