茨城県東海村の大強度陽子加速器施設J-PARCのT2Kビームラインにおいて、ダイヤモンド検出器に大強度のミューオンを照射して得られたデータの解析を行った。J-PARCでは、今年度始めより東日本大震災からの復旧作業が続けられていたが、12月には主リングでの陽子加速も確認し、T2Kビームラインでも再びニュートリノビームの生成ができるようになった。ビーム強度も昨年度平均と比べて3倍の150kWを達成したが、このビーム強度でもダイヤモンド検出器は安定して信号を出力することが確認された。データ解析の結果、ダイヤモンド検出器の前に設置されているPINフォトダイオードで得られた信号強度と比較して、ミューオンの照射量とダイヤモンドの信号の大きさとの非線形性は1%以内、信号の強度測定精度である(標準偏差)/(平均値)の時間変動は0.5%以内と、高い安定性を示した。ビーム強度が上がると、ダイヤモンド検出器内で生成される電子-ホール対の数も増加するので、(標準偏差)/(平均値)の値自体も、50kWのときと比べて倍近く良くなった。 また、ダイヤモンドのバンドギャップは5.47eVであるので、波長が220nm~230nmの紫外線によって電子を伝導帯の励起することができ、信号を得ることができる。ただ、今回のダイヤモンド試料は両面が金でメタライズされており、紫外線を入射することができるのは500μm幅の側面からのみという制約があったが、それでもセットアップを工夫して重水素ランプからの紫外線を照射し、信号を得ることができた。また、このことは、ビームラインに設置された検出器に対し、ビームが出ていないときにも回路の接続状況を確認できるという利点を与えることができた。
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