研究概要 |
LHCが本格稼動した23年度は,LHCの実験結果を注視しつつ研究を行った。特に,標準模型が内包している問題点の解決を図る意図で考えられた新物理学模型に対し,フレイバー物理を議論するために避けて通れない,ヒッグスセクターの物理に関して,精力的に研究を行った。 標準模型を拡張した場合,そのビッグスセクターも拡張されることが非常に多い。このようなヒッグスセクターの拡張は,フレイバー物理に対しても多大な影響をおよぼし得る。このため,本研究では,拡張ビッグス模型の特徴を系統的に研究し,フレイバー実験において薪物理学模型を探求する可能性の議論を行った。 本研究の結果として,超対称性模型のビッグスセクターを拡張した場合の,デカップリング効果をより深く理解することができた。具体的には,4つの2重項が含まれるような超対称性模型に対し,標準模型の極限では消えてしまうが,最小超対称性標準模型の極限ではノンデカップリング効果として残るような効果が可能であることを示した。このような効果は,LHC実験やリニアコライダー実験などによるヒッグスセクターの精密測定で特定できる可能性があるまた,標準模型の抱える問題点の一つである,バリオン数生成について,電弱バリオン数生成に必要な,1次相転移を実現する新しい超対称性模型の提案を行い,このような模型のヒッグスセクターの構造や特徴について,今後重要となるであろう議論を展開することができた。 この研究成果は,超対称性拡張ヒッグス模型のフレイバーセクターを詳細に調べるための土台となる重要な成果であると考えられ,新物理学模型の詳細を探求するという,本研究が当初目指していた目標に,より近づくことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,フレイバー物理等の将来予測される実験を通じて新物理学模型の詳細を明らかにする方法を提示することが目的であった。23年度においては,ヒッグスセクターの詳細を実験で測定することにより,新物理学模型のある種の特徴を明らかにできる可能性を議論した。このように,当初の目的であった,新物理学模型の詳細を明らかにする方法の探求という目的に向けて,研究は比較的順調に進展しているといえる。
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