研究概要 |
代表者:清裕一郎 B中間子の稀崩壊B→K1^+1^-におけるチャーム・クォーク・レゾナンスの効果を調べるために低エネルギー有効理論としての非相対論的QCDとQCDのマッチングを1ループ・オーダーで行った。これによってB→K,J/ψ→K1^+1^-のように中間状態として現れるチャーム・レゾナンスの効果を摂動論の第一近似で評価する準備が整った。マッチングの計算からカラー・オクテットのチャーム・レゾナンスが確かに存在し、B中間子の稀崩壊に大きく関与し得ることが示された。チャーム・レゾナンスの(カラー)オクテット状態から物理的なJ/ψへの遷移振幅の計算を完了させ、1ループ・マッチングと合わせて最終的な答えを得る予定である。 分担者:山田憲和 格子QCDを用いてK中間子のハドロン行列要素の計算を行う際、軽いu,dクォークの質量を格子上で扱うことが難しいため、やや重たい質量で計算しておき、カイラル摂動論が予言するクォーク質量依存性に従って行列要素を実際の質量値へ外挿する必要がある。従って、カイラル摂動論の作用に含まれるパラメーターを精密に決定しておくこと、及びストレンジ・クォークの質量領域がカイラル摂動論で取り扱えるか否かを見極めておくことは行列要素の精密決定において重要である。我々は格子上で厳密なカイラル対称性を持つoverlap fermionを用いてイプシロン領域でディラック演算子の固有値分布を計算し、これをカイラル摂動論の予言と比較することによりカイラル展開の主要項に現れるパラメーターであるカイラル凝縮の値を決定した。研究成果は論文として発表した(掲載決定)。 分担者:田中和廣 光円錐波動関数の決定において重要な、B中間子内部のクォーク・反クォーク・グルーオンの3体配位の寄与について、QCD和則に基づいた非摂動論的な評価を行った。対応するQCD和則へのQCD補正を新しく計算し,従来の評価を改善することができた。また、パートンの3体配位が重要となる他の例として、高エネルギー過程におけるD中間子生成の新しいメカニズムの計算も行った。以上の成果について、国際研究会で発表し,結果をまとめた論文の投稿を準備中である。
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