高赤方偏移のIa型超新星を使って、宇宙論パラメータを決める場合、Ia型超新星の絶対的明るさを高い精度で知る必要がある。現在は、近傍のIa型超新星の光度曲線の巾と絶対的明るさの関係を適用している。しかしながら、ダークエネルギーの状態方程式を赤方偏移の関数として求める場合、Ia型超新星が進化していないか、すなわち、上記の光度曲線と絶対的明るさの関係自体が赤方偏移の関数として変化していないか、という重要な疑問が残る。本研究では、この疑問を解くカギとして、Ia型超新星の多様性の起源を解明することを目的とした。 そのために、まず、Super-Chandra超新星と呼ばれる超新星の性質・起源の解明を進めた。この超新星の理論的モデルとして、Super-Chandrasekhar limitの質量を持つ白色矮星の爆発モデルを構築し、その光度曲線、カラー曲線を計算した。モデルのパラメータとして、白色矮星の質量、爆発のエネルギーをとり、それらにconsistentな元素合成が行われると設定した。計算された光度曲線および表面の膨張速度とを観測と比較した。観測例として、広島大学で詳しい観測のなされたSN2009dcを取り上げた。最も良く観測を説明できるのは、白色矮星の質量が太陽の2.4-2.8倍という結果が得られた。確かに、この超新星はSuper-Chandra Supernovaだったのである。Super-Chandrasekhar massの白色矮星が形成される進化過程の理論的なモデルに重要な制約があることがわかった。それは、母銀河の金属量が小さく、質量の大きな白色矮星を生み出すことが必要だということである。
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