2013年にサーベイ観測の開始が計画されているすばる望遠鏡Hyper-Suprime Cam(HSC)を用いた、赤方偏移7付近の宇宙最遠方の活動銀河中心核(AGN、クエーサー;超巨大ブラックホールへ物質が質量降着する際に解放される重力エネルギーを放射に変換して輝いている天体)を効率的に選別するための戦略を練ると同時に、データが得られた際に、背景の物理を正しく解釈するのに必要な、比較対象となるべき近傍のAGNの観測的研究も進めた。 具体的には、これまでに見つかっている赤方偏移が3-6の明るいクエーサーの数密度を基に、HSCサーベイで見つかることが期待される赤方偏移7付近のクエーサー、及び、赤方偏移3-6の暗いクエーサーの数密度を見積もり、宇宙初期の超巨大ブラックホール形成理論、クエーサーの寿命やダークハローの質量、宇宙の再イオン化の三次元構造に対して観測的に強い制限を加え得ることを明らかにした。また、似た色を示し、数としては圧倒的に多い銀河系内の褐色矮星を効率よく分離できると期待される手法も確立させた(http://optik2.mtk.nao.ac.jp/~imanishi/Paper/HSC-QSO/ImanishiHSC-QSO.pdf)。結果を、2011年11月に京都で開催された関連研究会で発表した。また、2011年8月にプリンストン大学にて開かれたHSCサーベイ全体の国際会議にも出席し、計画の進捗状況を把握すると共に、関連研究者と議論を深めた。 比較対象となるべき近傍AGNの研究に関しては、すばる望遠鏡を用いた高空間分解能の赤外線観測の研究成果を査読論文として出版した(Imanishi et al.2011 AJ 141 156)。あかり赤外線衛星に基づくAGNの分光観測から、赤方偏移0.5付近での星生成とAGN活動の結び付きを明らかにし、成果を査読論文としてまとめた(共著;Woo et al.2012)。
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