電気陰性度差の小さな軽元素同士の組合せからなる化合物は、強固な共有結合ネットワークからなる「隙間」の大きい結晶構造を有しており、1次元(トンネル)、2次元(層間)、3次元(クラスター空隙、空洞)チャンネルの利用が可能となる。本研究では、超高圧合成法をツールとして、ホウ素とイオウ原子を主成分としたrigidな格子空隙に種々のゲスト種を導入した新物質の探索を行った。Ca-B-S系については2種類の高圧相CaB_2S_4-II、CaB_2S_4-IIを合成し、CaサイトにEu^<2+>を置換した蛍光体の発行特性を調べた。励起・発光スペクトルを観測した結果、CaB_2S_4-II、CaB_2S_4-IIはいずれも緑色発光を示した。特に、BS_4四面体の多段連結からなるマクロテトラヘドラル構造を有するCaB_2S_4-Iは505nmにピーク波長をもつ強い緑色発光を示した。300~480nmに幅広い励起バンドをもつことから、青色LEDで励起可能な新材料であることが見出された。 一方、Caサイトがより高配位構造となるCaB_2S_4-IIの発光特性は、CaB_2S_4-Iとは異なり、2つの発光ピークが観測された。この2相ではEu^<2+>が置換するCaサイトの配位環境が大きく異なり、マクロテトラヘドラル構造によって形成される構造内のナノ空間が、発光特性のような機能発現において、特異な場を与えていることが示された。Eu^<2+>以外の他の希土類イオンもドープ可能であり、構造内ナノ空間に様々な発光中心を導入できることが明らかとなった。
|