層状・籠状物質における低温量子状態をNMR測定によって微視的に、電気抵抗測定によって圧力効果を調べた。まず籠状物質である超伝導体Ba_8Si_<46>のBa-NMR測定を行った結果、Baイオンの熱振動に起因するような異常は核スピン-格子緩和率には観測されず、通常の金属的な振る舞いを示した。このため超伝導機構は従来のBCS型で良く理解されるものと推察されるが、今後、超伝導状態の測定から、さらに超伝導機構について調べる予定である。 層状物質である鉄系超伝導体においては新たに発見されたペロブスカイト系において超伝導転移温度の圧力効果を調べ、結晶構造と転移温度との間に相関を見出した。超伝導転移温度と結晶のa軸長の間に相関があることに加えて、圧力下での転移温度の上昇幅もa軸長と相関があることが分かった。また、この系の47Kの最高転移温度は、少なくとも圧力効果によっては上昇しないことが分かった。さらに最近発見されたK_<0.8>Fe_2Se_2においてNMR測定を行った。核スピン-格子緩和率、Knight shift共に常伝導状態では強く温度依存し、フェルミ面近傍に大きな状態密度が存在することを示唆した。さらに、類似物質FeSeとは異なり低温に向けて発達する強い磁気揺らぎが存在しないこと、超伝導状態は他の鉄系超伝導体と同じ対称性を持つことに矛盾しないことを明らかにした。
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